walou番外編16 | ナノ





walou番外編16

 昼食や夕食を共にすることはあっても、ラウリの部屋で一晩過ごせることはなかった。エリク自身、時間をやりくりして恋人を訪ねているからだが、他にも理由がある。過保護な彼の親のせいだ。
 まだ幼い頃は一緒に眠っても、何も言われなかった。だが、成人した途端、彼らはラウリの部屋で一晩過ごすことを禁じ、さらに、彼がエリクの家に泊まることもやめさせた。何が悪いのかと言えば、おそらく最初からまずかったのだろう。
 穏やかで平和な夕食の時間を過ごしながら、エリクはラウリの前では見せない一面を持っているイハブとエクを見やる。

 あれは十歳の時だ。誕生日の翌日だったから、とてもよく覚えている。エリクは十歳になったら、ラウリのくちびるへくちづけすると決めていた。それを実行するたびに、思いが満たされ、幸福感に浸っていたら、いつも甘い焼き菓子を運んでくるエクから呼び出された。
 くちびるを重ねるのは、二人だけの時だけだ。だが、ラウリがエクに話してしまったらしい。
「君はもう十歳でも、ラウリは今年やっと七歳になるんだよ。イハブ様も僕も、もしかしたら君達が、将来、伴侶になるかもしれないって思ってるけど、ラウリにはまだ早い。あの子は体も小さいし、そういうことは……とにかく僕が心配なのは、お互い好きなのに、急ぐと傷つけることもあるから……エリク、君なら分かるよね?」
 性行為のことを言っているのだろうか。エリクにはまだそこまでの衝動はなく、ただラウリを独占したいという気持ちしかなかった。重要なところは省くが、理解しろ、というエクの大人理論に頷いた後、今度は彼の背後から怒りをこらえた様子のイハブが顔を出した。
「エリク、首長の息子でも関係ない。俺達のラウリを傷つけたら、左足と右足の間にあるものを縛って、切る」
 首を切るということかと思い、頷くと、イハブは、「そうだ。そうやって頭を使え」と言われた。その言葉の意味も分からなかったが、家に帰り、考えてみて、ようやく下半身を使うな、ということだと分かった。

 あの日から七年ほどが経ち、ラウリはあと二年で成人として扱われる。相変わらず、一泊させてもらえないが、部屋に二人きりという状況は許された。ラウリの部屋で抱き合い、くちびるを重ねる。
 ラウリは伴侶の式までに、行為に及びたいと言うが、彼が十六歳になるまではできないだろう。エクが心配した通り、彼は小さく、細い。今の体で自分を受け入れることは難しいと思った。
「ふぇ、ほひひゃなな?」
 背、伸びたかな、と無邪気に言うラウリが恨めしい。同時に、このままの小さくても可愛らしいと思う。その瞬間に、エリクの熱は爆発し、やはり小さな彼の顔を汚した。
「ごめん」
 寝台にあった布でラウリの顔にかかった精液を拭いてやる。
「いいよ、だって、僕、エリクみたいに飲めないから」
 まだ途中にもかかわらず、腰へ手を回して抱き締めてくるラウリを抱きとめ、その髪や鼻先にくちづけをした。
「ちゃんと拭かないと」
 布を水で洗い、もう一度きれいに拭いてやる。
「これ、替えてくる」
 桶の中の汚れた水と布を持ち、扉を開けた。蒸留酒と小さな碗を三つ手にしたイハブが、仁王立ちになり、行く手をふさいでいる。
「ラウリ、エリク、飲むぞ」
 エリクがイハブの顔色をうかがうと、彼は冷たい目で桶と布を見た後、寝台でくつろいでいるラウリへ笑みを見せた。
「ラウリ、お父さんにも教えて欲しいな。エリクに飲めて、おまえに飲めないもの」
 おまえは知性、品格、威厳を兼ね備えた男だ、とかつて祖父に言われた。その祖父がこの状況を見たら、おそらく大笑いしているだろう。
 どんな男でも、好きな人とその親の前では、ただの男なのだと実感した夜になった。

番外編15

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