walou番外編14 | ナノ





walou番外編14

 ラウリは草を踏む音に気づき、振り返った。イハブでもエクでもないことは分かっていた。二人は自然を壊さないように、もう少し慎重に歩くからだ。思った通り、振り返った先にいたのは、村の人間だった。十六を迎えた者は大人として扱われる。見た目は少女だが、目の前の彼女達は確かに伴侶を求めている大人の女性の目をしていた。
「今日またエリク様がいらしてたんですって?」
 ラウリは手先でもてあそんでいた紐を握り、小さく頷く。
「どうして教えてくれないの?」
「やっぱり、この村から選ぶのかしら?」
「今度はいつ来るとか、言ってた?」
 次々に口を開く彼女達の騒がしさに、ラウリは辟易する。イハブもエクも穏やかで、騒々しいと感じるほど声を上げることがない。ラウリは女性が嫌いではないが、こういうところが苦手だと思ってしまう原因だった。
「ちょっと聞いてる? エリク様、何か言ってた?」
「……何かって、何ですか?」
 彼女達は呆れたように溜息をつく。
「話、聞いてなかったの? 伴侶のことよ」
 その言葉に、ラウリはくちびるを噛む。十六になったエリクには、まだ特定の相手がいない。いつの頃からか、もう覚えていないが、エリクは二人だけの時にくちびるへくちづけをするようになった。それは彼が自分を好いてくれている証だと信じているが、はっきりと言葉にされたことはない。さらに彼は首長の息子だ。伴侶には子を成せる相手を選ぶべき立場だ。
「え、もしかして、ラウリ、あんた自分が伴侶になれると思ってる?」
 途端に彼女達から嘲りの笑いが漏れた。
「そりゃ、イハブ様達の息子だから、あれだけど、診療所も蒸留所もイハブ様とエク様の力で、あんたは何一つ役立ってないからね。それに、首長の一族は血筋を絶やせないし、万が一、同性の伴侶を選ぶとしても、あんたみたいな捨て子は論外よ」
 イハブやエクが聞いたら、どんなに穏やかなあの二人でも怒るであろう言葉を、ラウリは聞き流す。そういうふうに言われるのは、初めてではないからだ。言い返すこともなく、泣くことも怒ることもしないラウリに、彼女達はようやく諦めた。
「もういいわ」
 ラウリは内心、ほっとする。早く去って欲しかった。ちょっと待ってろ、とさらに森の奥へ進んだエリクに、聞かれたくなかったからだ。
「待て」
 怒気をはらんだ声に、彼女達はラウリの向こうへ視線をやり、そして、頬を染めた。左肩に彼の大きな手のひらが置かれる。ラウリは泣きそうになった。
「今のは何だ?」
 おそらく先ほどの話を聞かれていたのだと、ラウリにはすぐ理解できた。だが、彼女達は、もし聞かれていたとしても、それが怒るほどのことなのか、という態度だ。誰も口を開かない。彼はぐっと力を込めて、右手でかばうようにラウリを胸のほうへ引き寄せた。
「今の暴言は何だと聞いているんだ」
 ラウリはエリクの言葉に、手で顔を覆った。涙があふれたからだ。
「成人した者達が、十三の子を相手にみっともないと思わないのか。ラウリの親は確かに偉大な人達だが、彼はきちんとその知識を受け継いでいる。捨て子という言葉も間違いだ。彼の母親は彼にラウリという名を与えた。ラウリの語源は知っているだろう?」
 ヴァーツ山脈では寒すぎて育たない樹は、神の樹として知られている。永遠の愛を意味する樹の名前から、ラウリという名ができた。
 母親のことはイハブ達からも聞かされていた。身重の体での移動は大変だっただろう。それでも、彼女は故郷で育てることを決意して、戻る道中で出産した。そして、力尽きるまで、ラウリの名前と、必ずヴァーツで育てて欲しいと繰り返していたらしい。

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