わかばのころ34/i | ナノ


わかばのころ34/i

 潮はすぐに逃れようと、若葉の手を払い、布団の上へと後ずさる。
「何してんだ、若葉。何でこんなこと……」
 若葉は涙を拭い、潮へ覆い被さるように体を彼へ当てた。そのまま口の中へ彼のペニスを含む。
「若葉っ」
 無我夢中になった。一度だけ、潮のペニスを受け入れたら、それでもう終わりにしようと思った。性的な知識は、皆が話していたそういった雑誌から得た程度しかないが、若葉は同性同士のセックスにおいて、どこに彼を受け入れるかは知っていた。口でしてもらうのは気持いいと聞いていた。
 若葉は必死に舌と手を使い、潮のペニスを愛撫した。咎めるような声を出してた彼の呼吸がしだいに上がる。若葉を好きだから勃起するのではなく、愛撫されて気持ちいいから勃起する。だが、若葉のペニスは、彼が興奮してくれるから勃起していた。若葉は泣きながら愛撫を繰り返す。
 もうやめろ、と言われて、若葉は口での奉仕をやめた。下着と一緒にズボンを脱いで、布団の上で仰向け状態になり、呼吸を整えようとしている潮へまたがる。気づいた潮が体を起こそうとした。
「若葉っ」
 下には家族がいるため、大声は出せない。潮は小さな声で名前を呼んだ。その声音は怒気をはらんでいる。嫌われてもいいと、この瞬間は思った。まだ勃起している彼のペニスへ手を添えて、若葉はその上へ腰を下ろす。
「っつ」
 痛みは双方にあった。若葉はあまりの痛みに腰を浮かせ、潮のペニスも一気になえた。泣きながら、もう一度、挑戦しようとすると、腹筋をきかせて起き上がった潮に体を押され、今度は若葉が押し倒される形になる。
 若葉は小さな嗚咽を漏らしていた。殴られても仕方ない、と納得できる。だが、潮は押し倒した後、若葉の臀部を確認し、それから両腕で若葉のことを抱き締めた。
「バカ!」
 怒られているのに、潮の言葉は温かい。彼は何度も、「バカ」と繰り返した。若葉が少しずつ平静を取り戻すと、彼は腕を引いて座らせてくれる。
「何であんなことしたんだ?」
 今さら、テレビの声が耳に入ってくる。お笑い番組の作られたような笑い声が響いた。まるで自分を笑っているみたいに聞こえてきて、若葉は涙を拭いながら下を向く。下着とズボンをはき直した潮が、若葉の服を渡してくれた。
「何でこんな……急ぐ必要があるんだ? 若葉」
 怒気が消えた。若葉はそっと潮をうかがう。
「下、はけ」
 若葉は頷いて、足を伸ばし、下着とズボンをはいた。一生、顔も見たくないと言われたら、と考え始めて、また泣いてしまう。嫌われてもいいと思って、こんなことをしたのに、うまくいかないと、やっぱり嫌われたくないと思っている。
 若葉は自己嫌悪に陥った。潮は嫌がっていた。それでも、彼を襲うような真似をした。今したことは、嫌がる自分を無理やり連れていこうとした男と一緒だ。そのことに気づいて気分が悪くなる。
「うーちゃんのことが……好きだから」
 それを免罪符にすれば、何をしてもいいわけではない。分かってはいるが、若葉は好きという気持ちだけで動いたのだと、潮にも分かって欲しかった。
「うーちゃんだけの特別になりたい、同じ好きを返して、欲しいよ……」
 潮の顔を見るのが怖い。何と返事があるのか聞くのが怖い。若葉はつぶやくように言った後、目をつむり、耳をふさいだ。
「ごめんね。うーちゃん、ごめんね」


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