ひかりのあめ 番外編6 | ナノ





ひかりのあめ 番外編6

 俊治の中は熱く、指を二本受け入れることさえ苦しそうに見えた。その苦しげな表情を見るだけで、博人はこらえていた思いが弾けるような気分になる。痛みを与えたいわけではない。ただ快感だけをあげたいと思った。
 十分に解した後、コンドームを装着して、俊治の希望を確認した。辛いだろうに前からがいいと言う。顔が見えるほうがいいと言う。博人は俊治の言葉を受けて、衝動的に彼を抱きそうになったが、何とかこらえた。
 ゆっくりと、俊治の動きに合わせながら、己のペニスをアナルへ埋めていく。耐えるように目を閉じた俊治の拳がぎゅっと握られた。博人は少しでも楽にして欲しいと思い、その体へ何度もキスを落とす。
 ペニスを完全に入れた後、俊治の様子を見ながら、腰を動かした。博人自身、すぐにいきそうだったが、波が引くのを待ちながら、慎重に動いた。緊張と期待の中で、汗が吹き出す。

 俊治とようやく結ばれた。彼が声を上げながら、途切れがちに自分の名前を呼んでくれる。射精はほぼ同時だった。ベッドの上で息を乱しながら、博人は満たされた気分で、俊治を解放した。
「あぁ、もう」
 好きな人の前では格好よくいたいのに、子どもみたいにわがままに、独占欲をむき出しにしてしまう。だが、そういうことができるのも俊治の前だけだろう。笑いかけると、俊治も笑ってくれた。この笑顔を守るためには、何でもしたいと思った。

 ランチミーティングがない時はなるべく俊治の働いているイタリアンカフェに顔を出した。気づかれないように端の席を選ぶが、彼はいつも気づく。日常生活の中に小さな幸せを見出だしながら、博人はオフィスへ戻ってからも、上機嫌で仕事を続けた。

 休日出勤をしていた博人は、きりのいいところで帰ろうと考えていた。クリスマスプレゼントにもらった万年筆を使い、ドラフトをチェックする。ふと嫌な予感がして顔を上げた。だが、その予感が何か分からず、空を見つめていると、アレックスが入ってきた。
「どうした?」
 博人は我に返り、何でもないと首を振る。
「もうすぐ誕生日だな。飲みに行くか?」
 アレックスは尋ねた後に訂正した。
「そうか。シュンジがいるな。今年からは寂しく飲まずに済むか」
 微笑して頷いたが、胸騒ぎはおさまらない。
「俺、ちょっと、これ持ち帰る。じゃあ」
 鞄へ書類を入れて、コートを引っ張り、オフィスを出た。駐車場はビル裏側にある。一度、発進前に俊治の携帯電話を鳴らしてみたが、出なかった。今日は早上がりのはずだ。
 博人は外へ出て、俊治の勤めるカフェへ顔を出した。ホールアルバイトの一人を捕まえて、俊治の上がり時間を聞く。ショッピングモールのほうへ向かったと言われて、買い物へ行ったのだと結論づけた。
 家に帰って、メールを送った。冷蔵庫の中を見ながら、今晩のおかずを考える。嫌な予感は思い過ごしかもしれない。俊治だってたまには一人で出かけたいだろう。そう自分に言い聞かせて、だが、博人はもう一度メールを送っておいた。うざいと思われるのが嫌でメールを送ったが、さらに一時間が経つ頃、もう一度メールを送る。
 博人は落ち着かない気分で、ずっと携帯電話を握り締めていた。俊治はわりとこまめに返事をくれるほうだ。最初に電話してから数時間以上経っている。博人は小さく息を吐いて、発信した。
 迎えにきて、と言われ、博人は大慌てで家を出る。寝坊した時でさえここまで慌てたことはない。聞いていたファミリーレストランとその支店名をカーナビで検索して、車を走らせた。

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