ひかりのあめ 番外編5 | ナノ





ひかりのあめ 番外編5

 呼び出しに応じた透の指定した待ち合わせ場所は、街中にあふれているファミリーレストランの一つだった。中へ入ると、レストルームに近い喫煙席で、透と思われる男が、煙草を吸っていた。
 博人はまっすぐ彼のところへ足を進める。
「あー、あんたが浅井さん?」
 博人は向かいに座り、俊治を救ったという透のことを見据えた。彼が俊治の体を奪い、金を貢がせ、脅迫している。たとえ、かつては俊治が恋をしていた相手だとしても、博人の立場からは許せるわけがなかった。
「データはすべて持ってきましたか?」
 透がへらへらと笑いながら、テーブル上に写真やDVDを並べた。ちょうど店員が注文を聞くためにやって来る。博人はすぐに立ち上がり、店員の前へ行き、グラタンとハンバーグをセットで注文した。
 席に戻ってから、透の携帯も出すように言うと、彼は吹き出した。
「馬鹿じゃねぇの? 渡すわけないだろ? だいだい、携帯にはデータないから」
 データじたいは確かにテーブルに並んでいる。だが、博人は透の携帯電話から送信されたメールとその情報じたいを消したかった。
 博人は持参していた袋を透に渡す。中身は現金だった。テーブルに広げられたデータを集め、財布の中からさらに十万円を取り出す。それをテーブルに置き、透に差し出した。
「その携帯電話を売ってください」
 透は少し考えた後、金に手を伸ばし、携帯電話をテーブルへ置いた。
「今後いっさい守崎俊治へ近づかないでください。脅迫ならこちらで受けます。ただし、五体満足でいられると思わないでくださいね」
 博人が差し出した名刺に刻まれた文字に、透が顔をしかめた。運ばれてきた料理がテーブルに並べられていく。
「ここはおごりです」
 立ち上がり、去ろうとした博人の背中に、透が早口で聞いた。
「これこそただの脅しだろ?」
 振り返ると、名刺を掲げてこちらを睨んでいる透がいた。
「それが脅しかどうか、試したらどうですか?」
 博人はそれだけ言って、レジで会計を済ませてから外へ出た。名刺は博人の友人のものだ。施設を出てからはまったく別の道を歩んだが、今でも連絡を取り合う程度に仲はいい。

 少し長い髪を整えてやり、俊治がシャワーを浴びている間に掃除をしておいた。博人はアルバイトにも慣れてきた俊治の生活の変化に安堵していた。今は三食きちんととっており、顔色もいい。
 ハウスキーピングを入れているが、生活が落ち着いたからか、俊治は自分の手で片づけることも学んでいっている。
 一段落してノース・ポートをロックで飲んでいると、シャワーを浴びた俊治が出てきた。少し短くしただけなのに、印象がずいぶん変わる。博人は思わず手を広げて彼を抱き締める。頬にキスをすると、耳元で俊治が生活費を入れると言った。
 俊治名義の預金口座を作り、そこへ入れたらいい。博人はそんなことを考えながら、腕の中の温もりを感じた。不意に頬に口づけされる。俊治からの初めてのキスだった。よく実感できない間に今度はくちびるを奪われた。彼の触れたところをなめると、彼が濡れた視線を寄越してくる。
 我慢できずにソファへ押し倒した。むさぼるようにキスをして、俊治の熱い肌に手を滑らせる。このくちびるに、肌に、瞳に、別の男が触れ、映っていたと思うと、博人は嫉妬で狂いそうだった。あまりにも余裕がなくて、彼を奪うことに夢中になる。
 ベッドへ連れていった後、今まで抑えてきた感情や欲望が爆ぜるのが分かった。
「ごめん、余裕ない」
 博人は俊治のアナルを確認しながら、必死に暴走しようとする心を制そうとした。

番外編4 番外編6

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