ひみつのひ10 | ナノ





ひみつのひ10

 智章は足をとめた稔の腕を強引に引っ張り、レストルームへと入る。
「藤、ふ、じっ」
「何だよ?」
 また個室へ引かれて、稔は嫌だと叫んだ。助けを呼ぼうと、開こうとした口を大きな手が押さえる。
「静かに」
 稔は何をされるのか、怖くてただ智章を見上げた。彼は左手で稔の肩を引いて個室の中へと誘う。その表情だけを見れば、ひどいことなんかしそうになかった。だが、きっとひどいことをするのだ。稔はそれを感じて、涙を流した。
「すがっち、泣いてばっかり」
 温かい指先が頬をつたう涙を拭っていく。
「知ってる?」
 智章は肩から提げた小さなサイズの鞄の中を片手で探る。
「おまえが泣くとよけいひどくしたくなる」
 目当てのものを見つけた智章が、稔の目の前にコンドームのようなゴム製品をかざした。稔には何か分からない。眼鏡をかけてみたが、やはり何かは分からなかった。その反応は想定していたようで、智章は満足そうな笑みを見せた。
 何に使うのか分からないコンドームより厚手のゴム製品を、便座のふたの上におき、智章は稔のジーンズに手をかけた。
「や、藤、嫌だっ」
 恐怖から、稔は藤の手を払う。そんなに強く払ったわけではないのに、智章は怒りの表情を見せた。照明照らし出されたブラウンの瞳がすがめられ、大きな手のひらが稔のあごを滑り、脇腹をなでる。とんっと腹を軽く叩かれた。
「殴られたい?」
 稔は首を横に振る。
「じゃあ、早く脱げ」
「っ、藤は、ど……」
 どうしてこんなことをするのか聞こうとした。秀崇が一輝と付き合っていて、智章自身それを認めているなら、稔が秀崇を好きでいても、智章には何も迷惑をかけていない。
 だが、放たれるはずの言葉は智章のくちびるでふさがれる。眼鏡の縁に当たらないよう、智章は首を傾けて稔の口内をまさぐった。
「ん、っう」
 嫌だ、と稔は思った。気持ち悪いとさえ思った。智章の唾液と自分の唾液が混じり、くちびるの端から流れる。汚いと思っていると、智章はその体液を指先で拭った。そして、稔が茫洋としている間に、ボタンを外しチャックを下げて、ペニスを下着から取りだす。
 智章は優しく稔のペニスをつかんで、上下に擦る。
「っや、あ」
 稔のペニスが少し硬くなったところで、智章はコンドームに似たゴム製品をペニスへ被せた。窮屈な感じはなかった。だが、稔のペニスに密着した内部は、不思議と温かく、気持ちいいと感じる。
「動かしてみる?」
「え?」
 智章が鞄の中からスイッチのようなものを出す。
「三メートル以内なら大丈夫なんだって」
 音もなく、稔のペニスを包んでいるものがうごめいた。
「あ、ぃ、アアっ、や、とめ、あ」
「非貫通だから、いっても服、汚さないよ。中に溜まって、亀頭のところ、いっぱい擦ってくれる」
 オナホールを取ろうとした稔の手を、智章がつかんだ。
「とめるよ」
 内部の動きは止まったが、稔のペニスは熱を持ち、オナホールごと前にたち上がっている。
「あ、ふ、藤……」
 智章はにっこりと笑った。笑って、鞄の中から布製ガムテープを取りだし、たち上がった稔のペニスを左の太股に寄せた。
「あ、い、いやだ、藤、いや」
 勃起していたペニスが太股へガムテームでとめられる。稔の不快感を無視して、智章はジーンズを元に戻し、笑顔で告げた。
「秀崇たちが待ってる。早く行こう?」

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