spleen39/i | ナノ


spleen39/i

「フェリクスと仲よくなったんだ」
 同室者に言われて、創太はあいまいに頷いた。含みはないが、何となく部屋の中でしていることを見透かされている気分になる。購買で手に入れていた飲み物をミニ冷蔵庫から取り出し、自室へ戻った。
 ベッドに座って窓のほうへ目を向けていたフェリクスが、嬉しそうにこちらを見返す。
「マスカットとアンズ、どっちがいい?」
 瓶に入っているジュースを見せながら聞くと、「アンズって何?」と聞き返された。
「何だったっけ?」
 難しい単語ではなかったはずだが、改めて問われると思い出せない。困っていると、フェリクスは笑った。
「可愛い」
 瓶を取り上げ、テーブルへ置いたフェリクスは抱きついてくる。あの神秘的な香りがした。
「ば、ばくら? だっけ? おまえの香水」
 フェリクスが頷く。
「くさい?」
 やはり聞かれていたと思い、創太は正直に、「違う」と言った。
「甘くない、いい香りだと思ってる。神秘的で、あ、神秘的っていうのは、こう、秘密がありそうな、ファンタジーみたいな、不思議な感じのことで、おまえによく合って、ん……」
 いきなりキスをされて、創太は目を閉じた。ぶらついている手を両方とも握ってくる。キスの後、くちびるを舌でなめられて目を開けた。
「な、な、何?」
 フェリクスはにっこりと笑うと、創太の手を解放して、ベッドまで抱えた。
「ど、どうした? 何? フェリクス?」
 フェリクスはそっとベッドへ下ろしてくれたが、そのまま押し倒してくる。首筋にキスをされそうになり、彼の髪が触れただけで、創太は声を出して笑った。
「くすぐったい」
「くぐっ?」
 フェリクスには発音しにくいらしく、首を傾げた。
「くすぐったい」
 ゆっくりと言うと、今度はきちんと繰り返す。
「くすぐったい?」
「うん」
 意味を理解したフェリクスは長い指先で脇腹をくすぐり始める。創太は笑い声を立てながら、身をよじったが、抵抗はあっさり押さえ込まれた。笑いながらしだいに苦痛になり、「やめて」と息も絶え絶えに言うと、ようやく手が止まる。
 創太の呼吸が速くなっていることに気づき、フェリクスは悪乗りし過ぎたと思ったのか、「ごめんなさい」と謝ってきた。
「別に、いいよ。やめてくれたしさ」
 フェリクスは創太の腰のあたりをまたいでいた。しょんぼりと肩を落としている様子に、手を伸ばして、彼の髪に触れる。とても柔らかく、細い髪は綿菓子みたいだった。よく考えてみると、自分から触れるのは初めてかもしれない。彼のヘーゼルアイがきらきらと輝き、口づけのために顔が近づく。
 先ほどのようにくちびるをなめられて、少し口を開けると、すぐに舌が入ってきた。どうしたらいいのか分からず、目を開いたが、フェリクスは目を閉じていて、手を握ってくるだけだ。
「っん、う、ぅん」
 息が詰まりそうだった。鼻から呼吸できているにもかかわらず、創太はフェリクスに溺れそうになる。
「ンっ」
 密着している体の変化に気づき、創太は目を見開く。フェリクスの硬く大きな熱の塊が当たっている。そして、それに反応して、創太自身の熱もまた硬くなっていた。夜、自慰をすることはあるが、それは自分の手で触れてすることであって、こんなふうに誰かと体を重ねた状態で勃起することに、創太はびっくりしていた。


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