spleen19/i | ナノ


spleen19/i

 黒岩は明史の手足を拘束して、それぞれベッドの端へ結んだ。その拘束はお仕置きの時にされるもので、明史は今から死ぬほど辛い時間が訪れるのだろうと覚悟する。
「明史、話せなくなる前にもう一度だけチャンスをやるよ。若宮を落とせ」
「……できません」
 黒岩は溜息をつくと、口枷をはめる。呼吸が速くなり、ゴム製の枷で固定されている手足が震えた。黒岩の手には貞操帯があり、今日は射精禁止にされるのだと分かる。にじむ視界の先で彼は笑った。
「たっぷり一時間、射精禁止にした後、今度は連続で射精させてやる。その後、また俺を楽しませたら、おまえも気が変わるだろ?」
 明史は嗚咽を漏らした。アナルに冷たいバイブレーターが入ってくる。暴れても抜けないように固定した後、黒岩は部屋を出ていった。
「っふ、ぅ、ん、う、ン……」
 明史は口枷の端から唾液をあふれさせた。バイブレーターは無慈悲に前立腺を擦り上げて、明史のペニスを刺激する。貞操帯の中で勃起したペニスは痛みのせいで、射精にまで至らない。
 出口を求めてさまよう欲望の苦しみは、出口のない水槽の中で溺れることに似ていた。しだいに息ができなくなり、頭の中を占めるのは、息がしたい、という願いだけだ。

 一度だけ、聞いてしまったことがある。十二歳の時だ。大学の講義から戻った兄を見つけて、明史は彼に飛びついた。それから、涙を流して、その日が授業参観だったことを告げると、兄は困惑しながら、「仕事が抜けられなかっただけだよ」と慰めてくれた。
「お兄ちゃん、パパもママも、僕のこと、嫌いなの?」
 その時は兄の作った間に意味があるなんて思わなかった。
「……そんなことないよ。俺達は明史のこと大好きだ。パパとママはちょっと時間が作れなくなってるだけで、ちゃんと明史のことを愛してるよ」
 兄の大きな手に背中をさすられて、明史は眠った。しばらくすると、兄の声が響く。両親と言い合いになっていた。もっと明史に関心を持つように、と言った兄に、両親ははっきりと言い返した。
「あの子はもともと予定にない子なの。あなたが、弟か妹が欲しいって言ったから、堕ろさなかっただけ」
「しかも、おまえと違って、出来が悪い。女の子だったらよかったが、男であれでは先が思いやられる」
 明史は自分の部屋へ戻り、ベッドの中ですすり泣いた。辛かったのは翌日、兄が懸命に話してくれたことだった。
「明史、パパもママもやっぱり時間が取れなかっただけだって。二人ともおまえのこと、とても愛してるよ」
「……うん」
「おまえはもうすぐ寮に入るだろう? たくさん友達を作るんだ、いいね? 俺は来年の単位履修をアメリカでする。寂しい思いをさせるけど、メールを書いて」
 兄はおそらく希望的観測から、中等部の寮での生活のほうが、家で暮らすよりも楽しいと考えていた。確かに中等部一年の頃は少ないながらに友達もいて、心から楽しいとはいかないが、家よりはましだった。

 一時間が経過し、黒岩が貞操帯を外した。涙と鼻水と唾液でぐしゃぐしゃになっている明史の顔を見て、彼は写真を撮る。貞操帯が外れた明史のペニスから、勢いのない射精が続いた。
 黒岩はベッドに座り、右手でペニスを扱き始める。明史は口枷から悲鳴にならない声を漏らした。
「ほら、いきたかっただろ? どんどんいけよ」
 黒岩につけ入る隙を与えた自分が悪い。だが、このことが露見しても、明史の両親は責めることもしないだろう。無関心でいられることが、いちばん怖かった。


18 20

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -