meteor27/i | ナノ


meteor27/i

 夢中で何かを追いかけて、手を伸ばした先に同じものがある。
 セックスは由貴にとって、そういう感覚のものだった。最後に同じものを手にした二人は、その手の先にある互いを見つめることになる。
「ヨシタカっ」
 アランが呼ぶ自分の名前に、由貴は目を開く。白い光の向こうに、笑っている彼が見えた。

 乱れた呼吸を整えながら、由貴はアランの腕の中でまどろんでいた。由貴もアランも、激しい行為の後のこの静かで緩やかな時間を気に入っている。
「……星を、見にいこうか?」
 由貴が閉じかけた目を開けると、アランのヘーゼルナッツ色の瞳がすぐ間近にあった。
「言っただろう? 八月は流れ星がたくさん見えるって」
 ずいぶん唐突な提案だったが、由貴は気だるい体を起こす。
「先にシャワー使えよ」
「うん」
 シャワーを浴びると、だるさも眠気も消えて、由貴は話さなければならない進路の件を思い出した。
 ちょうど良い機会かもしれない。アランがどんな反応を返すのか、由貴は不安半分、期待半分の気持ちになる。
 由貴の道は由貴自身が決めるべきと言った反面、遠くの大学へ行くな、というのもまた彼の本心だろう。
 汗と汚れだけ流れ落とした由貴は、きゅっと蛇口を閉めた。

 数ヶ月前、歩いたのを同じ道を、由貴はアランとともに歩く。あの時はまだパーカーを羽織っていたが、今夜は不要だ。泥でぬかるんだ道も乾いており、歩きやすい。
 アランに手を引かれるように歩いていた由貴は、山型になった砂丘に足を取られる。
「っわ」
 急に砂丘に足が沈んでいくため、由貴は慌てて、アランの腕を両手でつかみ直す。
 目の前に広がったのは、あの夜と変わらない湖面だった。小さな波の音が聞こえる。
 アランが水際から離れた所に寝転んだ。由貴もその隣に寝転ぶ。記憶にある深い藍色だと思っていた夜空は、漆黒の闇になっていた。
 だが、だからこそ数多の星の輝きがより一層増して見える。ずっと眺めていると、闇と闇の間を、一筋の点が駈けていく。
「あ」
 流れ星。
 二人は同時に互いを見た。そして、微笑み合う。
「あ、また」
 由貴の言葉にアランがささやく。
「願い事、言ったか?」
 由貴は子どもがするように、ぎゅっと目を閉じて心の中で願う。その様子にアランが笑った。
「ほら、まただ」
 アランは指を空へ向けたが、由貴が目を開くと、すでに流れた後だった。
「アラン、あなたは……」
 僕よりも一つ多く、願い事できた?
 聞こうとして由貴はやめる。その代わり、身を乗り出して、そのくちびるにキスをした。


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