edge 番外編20/i | ナノ


edge 番外編20/i

 いたたた、という一弥の声を聞きつけ、貴雄は敬司と煙草を吸っている一弥の姿を確認した。ふざけているのか、敬司が一弥の頬をつねっている。あの人はいい歳して何をしているんだ、と急ぎ足で二人のテーブルへ向かった。
「なぁ、貴雄。一弥も立派になったもんだな」
 感慨深く言う敬司の言葉に、貴雄はすぐに同意した。まったくその通りだ。一弥はいつの間にか、大きく成長していた。平川の件は後で同行していた永野達から話を聞き、内心驚いていた。一弥は暴力を嫌う。その彼が手を出したというのだから、和信に相当入れ込んでいるのだと感じた。
 それが恋愛感情ではなく、かつての自分と同じように、自身を重ね合わせているだけだと分かるから、この件に関しては一弥が何をしても黙っていることにしていた。正直なところ、和信を家まで連れてきた時は、そこまでするのか、と焦った気持ちはあった。山中に相談しても、「それ、たぶん、3Pの誘いだろー」と軽くからかわれた。
「のん気なものだな」
 隣で敬司と日本酒を飲んでいる一弥は、わだかまりが消えたのか、ずいぶん楽しそうに飲んでいる。一弥は貴雄の独白にも気づかず、敬司がテーブルを移動すると、一人で酌を始めた。平川の借金はどこまで回収できるかまだ分からない。だが、これまで翔太の脅しにも一銭も払わなかった男だ。一弥が暴行を加えても、その場しのぎで約束しただけで、今後も滞る可能性は十分ある。
 貴雄は一弥の手から日本酒を奪い、一口だけ飲んだ。その時は裏から手を回して、平川の借金は全額回収しようと思う。自分が手を出したと知れば、一弥は怒るだろうが、ばれなければいい話だ。ばれたとしても、会社の利益に関わると言えば、納得するだろう。
 耳元へくちびるを寄せてきた一弥は、「おれ、ずっと、おまえのとなりにいる」と舌足らずな言葉を紡いだ。下半身に熱が集まる。市村組系の組織の人間しかいないが、いつもは慎重な一弥が、ここまで大胆になるとは珍しい。貴雄は一弥の体を抱え、山中へ視線を移した。彼はすぐに頷き、ホテルの人間へ話しかけている。
「ジュニアスイートなら空いてる」
 貴雄は一弥を抱えたまま、弘蔵と敬司のテーブルへ近づいた。見ただけで分かるらしく、「あいさつは年明けでいい」と言われる。それでも、頭を下げて、あいさつを済ませた。
 ジュニアスイートに入り、すぐにベッドルームへ向かう。一弥は深い眠りではないらしく、うっすら目を開けて、「きれいなでんき」と指差した。貴雄はその指先をなめ、彼の着ているスーツを脱がせる。いつもジェルを持ち歩いているわけではないため、まずは一弥のペニスからいかせた。
 一弥は酔うと絶頂までが短いが、貴雄は反対だった。酒が入ると、長くなる。手の中の精液を使い、一弥のアナルを解した。
「っあ、た、たか、っん、ア、あ」
 年末年始が多忙なことは今に始まったことではないため、求めても体力的に無理と言われることが多い。貴雄は一弥を抱けない日は仕方なく自分で抜いている。昨日も自分でしたばかりだが、頬を染め、自分の名前を呼びながら腰を動かしている一弥を見ていると、貴雄の雄はどんどん熱を持った。
 一度、手で抜いてから、と思い、一弥のアナルを解す指を抜くと、彼の手が自分の手を取った。まだ酔っ払ってはいるが、きらきらとうるんでいる瞳が自分を射抜く。
「もう、きて、たかお」
 一弥に振り回されてばかりだ。当人はそんなことを思いもしないだろう。だが、ここまで凶暴な欲をぶつけられるのも、極限まで甘えて欲しいと願うのも、このたった一人だけだ。まだきついアナルへペニスを入れ、中の熱さにうめく。あまり持ちそうにないため、貴雄は腰を引いて何度か緩く突いた。
「っあ、ぅ、アア……」
 一度、中で射精し、アナルからペニスを出した後、もう一度一弥の中へ入る。先ほどよりも激しく突いて一弥の射精と合わせるように絶頂を迎えた。少し汗ばんでいる背中をなでながら、回転して、彼を自分の体の上に乗せる。左肩にある彼の頭にくちびるを寄せ、もう眠っていると思っていたから、そっとささやいた。
「愛してる」
 これまで一度も言ったことのない言葉だったが、口にするとすんなり胸に響いた。一弥が起きている時は気恥かしいから言えない。ただ、胸を濡らす涙にはすぐ気づいた。寝たふりをする彼が愛しくて、貴雄はもう一度、その言葉をささやいた。


番外編19

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