edge 番外編8/i | ナノ
edge 番外編8/i
「俊治は元気だったか?」
「うん。ピザをうまく焼く方法、教えてもらった」
ピザという言葉に貴雄の表情が変わる。一週間前に食べさせたピザは、やはりまずかったのだ。まったく気づかなかった。貴雄は今までの料理もたとえまずいと思っていても、何も言わずに食べていたのだろう。
「今日のピザは俊治の協力を得て焼いたから、すごくおいしいんだ」
「そうか」
貴雄は煙草を置いて、キッチンにあるオーブンからピザを取り出す。
「温める?」
「いい」
貴雄は手でちぎって、ピザを頬張る。
「ん、うまい」
口を動かして笑う貴雄に一弥もつられて笑った。彼は冷蔵庫からビールを出して、一弥の前にも一缶置いた。
「なぁ、俺の料理ってまずい?」
ビールを一口飲んだ貴雄に聞くと、彼は苦そうな顔を見せる。ビールのせいではないことは分かっていた。
「……すごくうまいとは言えないな」
ダイレクトに言わない貴雄は、ビールのプルタブを開けて、一弥に差し出す。どうして今まで言わなかったのか、と聞きたいが、もし、俊治の言ったことが正しければ恥ずかしくて聞けない。
「俊治に言われたのか?」
「いや、うん、まぁ、そうだけど」
貴雄は煙草に火をつけた。
「あいつも長い間、料理してるからな。あいつのはうまくて当然だろ」
フォローしようとする貴雄の言葉が嬉しい。一弥は頷く。
「でも、もっと努力する。俺だっておいしいものが食べたいから」
おまえにもおいしいものを食べて欲しい。そう願いながら言うと、貴雄は煙を吐き出しながらほほ笑む。
「来い」
貴雄は煙草を潰して立ち上がる。キスは煙草の味だった。舌同士を絡ませた後、貴雄を見上げると、彼の指先がシャツの下へ侵入し、脇腹へ触れた。
初めての時は屈辱的に思えた行為を、今はとても欲している。貴雄に求められると安堵する。言葉がなくても、彼も自分と同じ気持ちでいることはすぐに分かった。
ベッドの上で互いに服を脱がせ合い、じゃれるように体を回転させる。準備していた貴雄がチューブ状のジェルを開けた。一弥のアナルの中へジェルが注がれる。
貴雄はすべて出しきると、中指でアナルの中を解した。最初は異物感だけだが、しだいに気持ちよくなる。貴雄のくちびるが胸や首筋を這う。鼻先で一弥の鼻先を突いたり、舌で耳朶をなめられたりするうちに、一弥のぺニスは存在を猛々しく主張した。
いつの間にか三本に増えた指が抜かれる。一弥は貴雄のぺニスを受け入れるため、深呼吸をした。
「っあ、た、貴雄」
「何だ?」
「ゆっくり」
痛くはないが、あまりにも性急だと苦しい。一弥の言葉に貴雄は確認するようにゆっくりと進める。だが、すべて受け入れることができた後は、いつも通りだった。
「っア、ああ、ん、ァア」
ヤクを打って犯された時の快感は、忘れられない。あの快感が欲しくて、誘惑に負ける人間もいるというほどだ。だが、意識がもうろうとした状態で最高の快感を与えられるくらいなら、手を伸ばして、目を開いた時にちゃんと自分を見つめる瞳と握り返してくれる手があるほうがいい。 |
番外編7 番外編9
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