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edge50/i

 貴雄はいつもそうだったように、一弥のアナルを解しながら、左手やくちびるを使った愛撫を怠らない。ここ最近は自分の手で欲望を吐き出させていたため、人の手の感覚に過剰に反応してしまう。
「っあ、アァ、も……っあ」
 一弥のペニスからは透明な液体があふれ、貴雄の指先がそこをこねくるように動く。その後、彼は一弥のペニス全体を手で覆い、上下に扱いた。自分の腹の上に落ちた精液を見つめながら、一弥は大きな呼吸を繰り返す。
 貴雄は頬を緩ませると、何度も一弥のくちびるや頬にキスをした。それと分からないタイミングで、アナルの中の指が増えていく。ずいぶん気をつかわれていた。大事にされているのだと感じることができる。
 一度目はうしろからだった。一弥への負担を考えてのことだが、背中にある刺青を見ながらしたいという願望もあったようだ。貴雄の熱いペニスを受け入れた時、一弥はくちびるを噛み締めて涙をこらえた。
 痛みがあったわけではない。心で感じている以上に、体が貴雄を求めていたことが分かり、感極まって涙があふれた。最奥にまで達した貴雄のペニスが、一弥の中を乱していく。
「ん、アァ、っあ……ぁあ」
 貴雄は右手で背中をなでながら、左手で一弥のペニスへ触れた。そして、彼は一弥のペニスを根元から押さえ込み、腰の動きを速める。絶え間なく声を漏らしながら、一弥はいかせて欲しいと口走った。貴雄は彼が絶頂に達する瞬間に合わせて、一弥の熱も解放してくれる。
 五分程度の小休止の後、貴雄はすでに回復しているペニスへコンドームを被せて、二回目に挑戦した。二回目もうしろからで、一弥は比較的、楽な姿勢で彼を受け入れたまま自分も射精することができた。
 三回目の前にもう少し休憩したいと思ったが、貴雄は満ち足りた表情で新しいコンドームをつけようとしている。体を回転させた一弥は、乱れた呼吸を整えながら、「煙草が欲しい」と言った。彼はすぐに灰皿とライター、そして、一弥の煙草を持ってきてくれる。
 一本吸っている間、貴雄は一弥の体へ触れ、キスをし、愛撫を続けた。以前なら煩わしいと感じたはずだ。だが、今はくすぐったい気持ちにしかならない。こんなふうに誰かから愛されると想像すらできなかったからだ。
「……一生、一人ぼっちかもって思ったことある?」
 一弥が尋ねると、貴雄は背中を擦る手を止めずに言った。
「誰からも愛されないかもしれないと思ったことはある」
 煙草を潰して、貴雄を見る。彼はまだ背中をなでていた。
「まるで今、愛されてるみたいな言い方だな」
 意地悪く笑うと、貴雄は手を止めた。
「おまえだって、まるで今、一人ぼっちじゃないみたいな言い方だな」
 視線が絡んだ後、互いに吹き出した。そのまま押し倒されて、正面から貴雄を受け入れる。自分の上で気持ちよさそうに目を閉じた貴雄を見て、一弥は彼の動きに合わせて自ら腰を動かした。

「明日から、愛人のほうがよかったと、後悔するくらい働かせてやるぞ」
 貴雄の言い方に笑ってしまう。夕方までベッドの上で愛し合った後、一緒にシャワーを浴びた。一弥は、L字型のカウチソファの角に座っている貴雄のひざの上におさまる形で座っていた。
 笑いながら大きく口を開ける。貴雄がバニラアイスをすくったスプーンを差し出してくる。それに食いつこうとすると、彼はさっとスプーンを引き、バニラアイスを頬張った。
 したり顔の貴雄を見て、一弥は彼の後頭部を手で押さえた後、そのくちびるを奪う。歯列をこじあけて、舌で彼の口内に残っていたバニラアイスをなめた。冷たくて甘い味が口の中いっぱいに広がる。
 好きだなんて簡単に言えない。だが、愛しているという重苦しい言葉も当てはまらない。空っぽだった感情が、ぎりぎりのところで満ちていく。この満たされた思いと今いる居場所を失いたくない。そのためには、もっと強くならなければならない。
「貴雄、俺、頑張るから、先にご褒美」
 胸に秘めた決意を隠すように、一弥はもう一度、口を大きく開けた。今度はちゃんとバニラアイスが口の中で溶けていく。貴雄の瞳はすべて見透かすかのように光をたたえていた。明日からまた忙しくなる。二人はほんのわずかな休息をゆったりと楽しんだ。



【終】


49 番外編1(本編から2年後くらい/とある組員視点)

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