ひみつのひ6 | ナノ





ひみつのひ6

 どうしてこんなところでオナニーしろと言われているのか。嫌がらせとかいじめとか、そういう概念を越えている。稔は個室の壁に背をあずけたまま、自分の前にいる智章の内履きを見つめる。
「できないの?」
 顔を上げると、智章は口元に笑みを浮かべていた。こんな状況で笑っているなんて異常だと稔はすぐに視線を外す。
「手伝おうか?」
 まるで窮地に陥っている人間を助けるかのように言われて、稔は口を開く。
「な、んで?」
 本鈴が鳴りはじめる。それが終わるのを待ってから、智章は答えた。
「秀崇のこと、汚さないでくれよ」
 それが本当の理由かどうか稔には分からず、その続きを問うことができなかった。
 智章は緩めていたネクタイで稔の両手を縛り、無理やり便座に座らせた。パニックになった稔は当然、抵抗したが、昨夜殴られた腹を何度か攻撃されると、ただ嗚咽を上げるだけになる。
 稔は今まで誰かに殴られたことはなかった。だから、その痛みと一緒に感じる負の力の強さに打たれていた。抵抗すれば殴られる、という恐怖はとても簡単に稔を大人しくさせた。
 ネクタイで縛られた腕はパイプにつながれ、智章はさらに稔のネクタイを外して、嗚咽を漏らす口へと突っ込んだ。
 智章の指がチャックにかかる。
「っんぅ、っぅ」
 反射的に足をばたつかせると、智章が拳で腹を殴ってくる。その拍子に眼鏡が床へ落ちた。ふだん人目にさらすことのない部分に触れられて、稔の目から涙があふれる。腹を殴られる痛みと間近に迫る智章の表情に、稔は足の抵抗を止めた。
 智章は先ほどまでの冷酷な表情を一変させ、欲情の表情を浮かべていた。たとえばそれが好きな相手からなら、こんな状況でも受け入れられたかもしれない。だが、智章は違う。
 智章は下着の中から稔のペニスを引っ張り出した。
「ウッ、ン、ン」
 いくら稔が嫌だと首を振っても、智章は指先を動かしつづける。
「どんなふうに想像してる?」
 他人の手だと思うだけで、稔のペニスはもう先走りをこぼしていた。どれくらい頻繁にするのか分からないが、稔はあまりオナニーをしない。性欲じたいが薄いこともあるが、秀崇を想像してやることに罪悪感があることも極端に回数が低い理由だった。
 だから、智章の指の動きは稔にとっては拷問だった。気持ちがよすぎて、思わず目を閉じて感じようとしてしまう。先走りで滑る手が、根元から先端までいじり、先端の蜜があふれた部分を押されると、呼吸することさえ忘れそうになる。
「やらしいな。腰まで振って」
 智章の声に体が揺れた。目を開くとぼやけた視界の先に大きな手のひらが見える。
「見て。おまえの精液でベタベタ」
 ぶわっとあふれた涙が頬をつたった。耳の奥で学級委員の言葉がよみがえる。


「智章、怒らせっと怖いから」


 秀崇と同室だから?
 秀崇が好きだから?
 秀崇で抜いたから?


 こんなふうに嫌われたことはなかったから、どうすれば関係を修復できるのか分からない。稔は智章のことを好きではなかったが、そういう相手だとしても、こんなふうに嫌悪されると悲しい。

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