falling down58/i | ナノ


falling down58/i

 レアンドロスの左手がトビアスの右手を握る。彼は右手でトビアスのペニスをいじった。すぐに先走りで濡れ始める。トビアスは自分の上へ覆い被さっているレアンドロスを見つめた。視線に気づいた彼がキスをする。左手が空いていたため、トビアスは彼のペニスへ触れようと思ったが、与えられる快感が大きく、与えることを考える余裕は消えた。
 今までは奉仕する側だった。準備も後処理も一人でしていた。行為の最中は、誰もトビアスが感じているのかどうかなんて気にしない。相手が満たされれば、トビアスがどんな状態でも放置された。
「う、ぁ……あ、レア、ん」
 いきそうだと目で訴えると、彼は亀頭部分を少し擦り、今度は全体を擦り上げた。声を我慢できずに、トビアスは彼の左手を強く握りながら射精する。前だけをいじられていくのは、アナルセックスをするより、精神的にも肉体的にも負担が軽い。
 レアンドロスは手や腹を汚した精液をティッシュで拭き取り、いたるところにキスをくれる。彼自身も硬くなっているが、彼はまずトビアスを優先させた。終わった後もベッドから離れることなく、トビアスのために愛撫を続けている。
 トビアスはそっとレアンドロスのペニスへ触れた。自分のものもそうだが、トビアスはこれまであまり性器を直視できなかった。レアンドロスがベッドへ座ったため、トビアスも起き上がり、あぐらをかいた彼の股間へ手を伸ばす。軽く握ると、脈を打っていることが分かった。彼の熱いペニスへ触れ、彼がしてくれたように手でしごく。
 今まで意識していなかったが、向かい合うと距離ができる。レアンドロスの吐息をそばで感じたいと思い、トビアスはあぐらをかいている彼の足を広げ、足の間へ迫った。顔が近づく。かすれた、「ビー」と呼ぶ声にこたえて、キスをする。手の中にあった熱いペニスが大きくなり、けいれんするように動いた。
 射精する瞬間、レアンドロスはいきなり抱きつき、トビアスをベッドへ倒した。トビアスは驚いたものの、そのまま彼を抱き締め返す。ペニス同士が触れ合い、股の間に彼の精液が流れた。まだ脈打つ彼のペニスが、トビアスにも熱を移す。
「レア」
 ブルーの瞳がこちらを見た。満たされた優しい笑みを浮かべた彼は、トビアスの額にかかる髪をすきながら、「シャワー、行こうか」と言った。内腿に当たる彼のペニスは硬い。
 悪夢はいまだに見る。記憶の中にはあいまいなものもある。レアンドロスがどんなに献身的に愛情を注いでくれても、愛されていると実感しても、不安になる時もある。記憶をなくしたままのほうが幸せだったのかもしれない。だが、必要だから思い出した。トビアスはそう考えている。
 辛い記憶のほうが圧倒的に多い中、レアンドロスやジョシュアと出会ったことは、トビアスの人生でいちばんの宝物だと言える。離れようとしたレアンドロスの手を握り、トビアスは口を開いた。
「レア、今日、試そう?」
 ほほ笑んでいたレアンドロスの表情が変わる。彼は動揺していた。素敵な思い出にしようと約束していたから、彼はたとえば、一ヶ月先のトビアスの誕生日や、大学へ入ってからと考えているのかもしれない。
「ビー、急ぐ必要は」
 トビアスは首を横に振った。
「急いでるんじゃない。ただ……その、その日を特別なものにしたくて、色々と考えてくれてるのは嬉しいけど、もし、本当に素敵な思い出にするなら、今日みたいな日がいい」
「今日?」
 レアンドロスはかすかに首を傾げた。
「何もない、春の一日だった。でも、一緒に裏庭の土をいじって、勉強して、食べて、幸せな一日だった。今日みたいに、何の変化もない、でも、幸せな一日の最後に、一緒になれたら、って……普通の恋人同士みたいでいいなって思って」
「……ビー」
 レアンドロスは隣へ寝転び、腕や腹へ触れた。
「普通の恋人同士みたいじゃなくて、俺たちは普通の恋人同士だろう?」
 彼は小さく笑い、トビアスの目尻からあふれた涙をくちびるで受けた。ナイトチェストの引き出しから、コンドームや潤滑ジェルを取り出し、彼は息を吐く。


57 59

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -