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 玄関から宮田達が入ってきた。宮田は二人の男を従えている。
「済んだか?」
「はい。詳細はのちほど」
 宮田は直広の前に立ち、二人の男を紹介してくれた。
「藤野と城。何かあれば、いつでも彼らに言えばいい」
 男達が頭を下げたため、直広も下げ返した。
「あの、お世話になります」
 藤野も城もスーツを着ているが、歳は近そうだ。宮田は紙袋を直広へ差し出す。
「優が携帯、充電したって言ってたぞ」
 直広は礼を言って、中から携帯電話を取り出す。電源を立ち上げて、写真と動画のデータを確認した。
「よかった」
 解約されているようだが、データは残っている。直広は安堵して、史人の頭をなでた。
「これが新しいやつ。必要な番号は全部入れてある」
 宮田から新しい携帯電話を渡され、不要だと言う暇もなく、高岡が玄関で靴を履き始める。直広が呼びとめる前に、史人が彼の足へ触れた。
「りょー、いくの?」
「あぁ、仕事がある」
 自分の時と同じように、行かないでと言うのだと思っていたら、史人は違う言葉を口にした。
「いつかえるの?」
 史人の言葉に固まったのは、直広だけではない。宮田達も固まり、高岡がどうこたえるのか、はらはらしている様子だった。高岡は靴を履いてから、史人のことを抱え上げる。
「そうだな……週末には寄ろう」
「しゅうまつ?」
「あと二回寝たら、週末だ」
 高岡がこちらを見た。直広は史人を受け取るため、玄関へ向かう。
「すみません、お忙しいですよね。史人の言うことは」
 気にしないでください、と続けようとした。高岡は確かに子どもの扱いもうまく、優しいと思うが、直広達のことを相手にしているほど暇ではないはずだ。
「それまでは藤野と城が遊んでくれる」
「ほんと?」
「あぁ。二人とも泳ぎは得意だから、下のプールへ連れてってもらえ」
 喜ぶ史人を抱え、直広は高岡へ軽く頭を下げた。彼は直広の耳元へ口を寄せ、「熱が下がるまでは、あの二人に任せておけ」と告げた。
「宮田」
 高岡が宮田を呼び、藤野達が頭を下げて見送る。直広は史人を下ろして、額へ触れる。寒いと思っていたが、確かに熱があるようだった。
 エレベーターまで見送っていた二人が戻ってくると、直広はもう一度、頭を下げる。
「そんなかしこまらないでください」
 藤野の言葉に、城も頷く。
「深田さん、熱があるんですよね。史人君のことは見てますから、ベッドで横になってください。今、薬を取りにいかせてます」
 藤野は直広の肩へ触れ、部屋へと促す。その間に、城が史人と話しながら、ローテーブルの上にあった食べかけのうどんを片づけ始めた。
「あ、あの」
「すみません、気づきませんでした」
 キッチンの向かいにあるテーブルの上には、ブランドのロゴマークが入ったたくさんの袋が置いてあった。藤野はその中から、服を取り出す。
「その服では寝苦しいですね。こちらをぞうぞ」
 彼は手にしているパジャマを直広へ差し出した。
「あ、いえ、あの、そういうことじゃなくて」
 ローテーブルを片づけた城は、紙袋から真新しいおもちゃを出して、史人の前に並べた。
「これ、やさいの」
 史人はDVDボックスへ触れる。高岡と見ていたアニメだ。たくさんのおもちゃを前に、史人は瞳を輝かせる。


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