on your mark21/i | ナノ


on your mark21/i

 彼はもう一つ、別の低周波装置を取り出した。そちらはパッドが二つしかなく、その装置は肩のそばに置かれる。直広はすすり泣きながら、健史はどうして借金を作ったのだろうと思った。

 健史が小学校五年生の時だった。学校から呼び出されたものの、直広は仕事を抜けられず、終わってから出向いた。呼び出された内容は電話で聞いていた。健史がクラスメートのゲーム機を盗んだ、ということだった。
 直広が到着した時間が遅く、すでに相手の子と親は帰っていた。健史は校長室で反省文を書くように言われていたようだが、まだ一行も書いていなかった。直広はまず担任から詳細を聞いた。それから、むくれている健史にも事実を確認した。
 健史は、「盗った」と事実を認めた。校長と担任へ頭を下げて、直広は健史とともに一度、家へ帰った。帰り道で、盗んだ理由を聞いたが、彼は教えてくれなかった。
「たけ、欲しかったら、今度から、俺に言って」
 少し先を歩いていた健史は、怒っているように見えた。
「言ったら、買ってくれんの?」
 すぐにこたえられずにいると、健史は涙をこらえるように、言葉を吐き出した。
「何で、何も言い返さなかったんだよ! 盗んだのは俺が悪いけど、なおにいが未成年なことも、うちに親がいないことも関係ないのに!」
 校長室で健史の担任は、言葉を控えつつも、健史の素行が悪いのは、家庭環境のせいではないかと指摘した。直広は自分の不甲斐なさから、何度も頭を下げたが、健史にはその姿が情けなく映ったのだろう。
 直広はその日のうちに、相手方の家を訪ねた。相手方もやはり、家庭環境のことについて言及し、健史のクラスメートの子は、ゲーム機をもっていないから、健史には友達がいないと教えてくれた。
 自分と同じ思いをさせたくないと思っていたのに、やはり同じような状態に陥っている。直広は翌日には銀行へ行き、ゲーム機とソフトを購入できるだけの金を引き出した。健史はまだ小さいのに、気をつかっているのだと思うと、自然と涙があふれた。
 これから先、健史が非難される時、家庭環境のせいにされるのは嫌だった。直広には何が平均で、何が普通なのか、分からないが、健史が困らないように、できるだけ貯金をしようと決意を新たにした。生前に母親が、「貧しいって嫌だね。本当に貧しいと余裕がなくなって、心まで貧しくなるもの」と言っていた。直広はその言葉を実感していた。
 ゲーム機を買いに行こう、と学校から帰ってきた健史に言った。健史は喜んでくれたが、ショッピングモールで家族連れを見て、ぽつりと漏らした。
「父さんと母さんと一緒に、ごはんとか食べに行きたかったな……」
 ゲーム機を持ったことで、友達ができたかどうかまでは確認していない。だが、あの時、健史が漏らした願いは、直広がどんなに働いて、貯金しても叶えられないものだった。
 その決して与えられないものを補う何かを、与えることができていたなら、健史はきっとあんなふうに人生を終えずに済んだはずだ。

 健史が借金を重ねる前に、この仕事を始めればよかった。一晩に二十万円も稼げるなら、馬鹿げた矜持は捨てて、さっさと体を売っていれば、健史のことを救えたかもしれない。
 男は乳首にパッドを装着した後、皮のベルトを外し、アナルの中にあったバイブレーターを出した。紙袋から三つ目の低周波装置が出てくる。卵型ローターと似ていたが、そのコードの先には同じ型の装置とつながっていた。
 直広のアナルは容易にローター型低周波装置を飲み込んだ。前回は乳首とペニスだけで済んだが、電圧が低いとはいえ、体内に流れると考えただけで、息が上がる。
「興奮してる。嬉しいか?」
 電気で責めて興奮するのは男のほうだった。彼は電気に苦しめられる姿を見て、興奮し、勃起する。口淫しても反応しなかったのは、その性癖のせいだった。
「い、いや、だ……やめ、て、くだぁああ!」
 男は前触れもなく、直広のアナルから責めた。腰を突き上げても、中の刺激は止まらない。快感ではなく、条件反射だった。前立腺に走った強く甘い刺激が、ペニスへ突き抜けようとするが、貞操帯が邪魔をして勃起も射精もできない。
 乳首とアナルへの電気責めは、男が完全に勃起するまで続いた。直広は半開きの口から唾液を垂らし、気を失うこともできない状態で男の命じるままに言葉を吐く。
「こんなに楽しんでるのに、電気が怖いなんて嘘だろう?」
 直広はその言葉に首を縦に動かす。


20 22

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -