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 アナルをほぐした直広は、ベッドに仰向けになった。軽くせき込むと、せきが止まらず、頭痛がした。寒さから震えていると、モニターに客が映る。あの男だった。粘りつくような視線でこちらを見すえ、彼は、「オール、二十で」と告げた。直広が頷くと、モニターが消える。
 権利がないと言った新崎の言葉を思い出す。客の要求にはすべてこたえろ、と最初に言われた。低周波装置はスタンガンと異なり、大きな電圧ではないものの、性器やアナルへ直接刺激を与えられる。前回のことを思うと、怖くてたまらなかった。
 紙袋を提げて入ってきた男は、その紙袋を台のそばへ置いた。ベッドに座っていた直広が立ち上がると、彼はこちらへ勢いよく歩いてきて、直広の左頬を殴る。ベッドに手をついて、もう一度、立とうとすると、彼は腹を蹴った。直広は床へ転ぶ。
「謝れ」
 直広は額を床へつけて、謝罪する。
「何で拒否した?」
 靴で頭を押さえつけられた。直広は短い息を吐きながら、「電気が怖いからです」と正直にこたえた。
「怖い?」
 男は直広の頭から足をどけて、ベッドへ座った。卑しい笑みを浮かべた男は、新崎と同年代に見える。体格もよく、容姿も上品なため、こんなところで男を買っているなんて誰も信じそうになかった。
「嬉しいの間違いだろ?」
 直広の瞳に怯えが映る。男はチェストからコンドームとバイブレーターを取り出す。バイブレーターへコンドームを被せて、彼は直広の前へ差し出した。直広はくちびるを結び、それをアナルへと押し込む。潤滑ゼリーで慣らしてあるアナルは、徐々にバイブレーターを飲み込んでいった。
 男は台のほうへ向かい、そこに並べられている道具から一つ、手にして戻ってくる。貞操帯だった。コードレスになっているバイブレーターが動き、直広は短い息を吐く。ペニスが軽くたち上がったところで、彼は貞操帯を直広のペニスへ装着していく。
 根元を拘束して、勃起したペニスを押し込むシリンダーを調節した後、皮のベルトを締め、アナルに入っているバイブレーターが抜け落ちないようにされた。
 ベッドに座り直した男が、自らのペニスを取り出す。彼のペニスはまだなえたままだった。直広は指示がある前に、そのペニスをなめ、口の中へ含む。彼が勃起するよう、入念に舌を動かし、喉の奥でくわえた。それでも、彼はなかなか勃起しない。
「ッン」
 しばらくすると、バイブレーターが動き始めた。前立腺を直接刺激され、ペニスが熱くなる。だが、シリンダーの中にあるペニスは、それ以上大きくすれば痛みが伴う。快感と痛みに汗を流しながら、直広は懸命に男のペニスをくわえ続けた。
「何で泣いてるんだ?」
 男は馬鹿にするように言って、バイブレーターの強さを上げる。
「っう、ンン、ふ……ウウ」
 思わず男のペニスを吐き出し、直広は床に転がった。部屋が歪んでいる。直広は汗をかいていたが、寒さで震えていた。男は勃起していないペニスをしまい、床に転がる直広のそばへしゃがむ。
「俺はまだ勃起してないのに、もういきたいわけ?」
 直広は貞操帯をつかみ、力なく引っ張った。腰を突き上げるようにして動いても、ペニスの勃起は阻まれ、射精できない。頭がおかしくなりそうだった。バイブレーターの振動が止まる。
「自分であそこまで行って、足、広げろ」
 直広は男が見つめた先にある台へ向かって、這っていく。涙と鼻水を手で拭い、下半身のうずきや痛みに悶えた。台に手をついて立ち上がろうとしたが、直広はその場に座り込んだまま動けなくなってしまった。
「体調が悪いのか?」
 男は直広の体を抱き上げ、台の上に座らせた。息切れのような症状に胸を押さえようとした直広の手に、彼の手が重なり、それから、押し倒された。
「苦しそうだな。だけど、俺はおまえを買ったんだ。ちゃんと楽しませてくれよ」
 頭上で手が拘束される。直広はにじむ視界の中で、今すぐに史人のところへ帰りたいと思った。史人を抱き締めて眠りたい。こんなことはもうしたくない。
 男は直広の足を開かせて、それぞれの足首を拘束具で台へ固定した。紙袋から低周波装置を取り出す音が聞こえる。台はベッドと同じくらいの大きさで、彼は低周波装置を直広の太股のそばへ置いた。先端に六つのパッドがあり、コードが絡んでいたため、彼はそれをきれいにほどいていく。


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