on your mark番外編37/i | ナノ


on your mark番外編37/i

 前立腺を見つけた敦士は、周囲をなぞるようにして指を動かした。ペニスも愛撫され、絶頂を迎えそうになっては、首筋や乳首へ刺激が分散されていく。敦士は何度か繰り返し、彼自身のペニスを史人の太股へ押しつけた。
「あや、もう三本、入ってる」
 刺激から与えられていた快楽におぼれ、史人はアナルを広げる指が増えたことに気づかなかった。額へはり付いていた髪を横へ流し、小さく頷く。敦士のペニスは大きく立ち上がり、ゴム越しでも熱が伝わる。
「っあ」 
 息を止めそうになると、敦士がキスを仕掛けた。
「あや」
 鼻先が触れ、彼の腕がしっかりと脇の下からうしろへ回る。彼は小さくうめいた。
「いた、い?」
「痛くない。ただ……」
 敦士は味わうように目を閉じる。
「俺も、いたく、ないよ」
 まだ気持ちよくはないものの、痛みはない。直広の言う通りだと思った。ただつながっただけなのに、勝手に涙があふれてくる。
「あや、動いていいか?」
 上半身を動かし、少し体を持ち上げた敦士も、瞳をにじませている。
「うん」
 自然と左手を握り合った。敦士が動くと、圧迫された感じの中に快楽が広がっていく。擦り合うだけの行為とは異なる快感だった。
「あ、んっ、あつ、アっ、ぁあ」
 あや、と耳元で呼ばれた。体がきゅっと縮むような感覚を覚える。その瞬間、史人は達していた。呼吸を乱した敦士が、頬をなで、キスをくれる。コンドームをつけたまま、彼は史人の隣へ大の字で転がった。つながったままの左手を握ると、握り返してくる。
 視線が合えば、互いに笑みを浮かべた。家族や兄弟の仲にも特別な絆はあると思う。だが、その特別が何か、今まで深くは考えなかった。
「あーくん」
 左手を握ったまま、肘をついた敦士が、右手で髪や体をなでた。
「本当に、ずっとそばにいてくれる?」
 敦士はとても幸せそうに笑い、頷いた後、言葉にした。
「俺はずっと史人のそばにいる」
 史人はその言葉に満足した。しばらく、寝転んだまま愛撫を楽しみ、一緒に汗を流そうとバスルームへ向かった。

 気持ち悪いくらいの上機嫌だ、と言われて、史人は小さく笑った。組織学の試験も終わり、金曜ということもあって、皆で飲みにいこうと誘われたが、断った。駅前の喫茶店で待っている敦士へ近寄り、いつも通り、駅へと向かう。
 表面上は何も変わらない。だが、敦士を見つめ、彼から見つめ返される時、自分達の関係は変わったのだと分かる。さすがに毎日はできなかったが、史人は時間と体力が許す限り、彼を受け入れていた。
「パパ達、もう帰ってるかな?」
「あぁ。遼パパはたぶん、出てるだろうけど」
 扉を開けると、少し日に焼けた直広が迎えてくれる。
「おかえり」
「パパこそおかえり」
 四十六歳の直広は、長旅の疲れも見せず、夕飯の支度をしていた。プーケットへの旅行は三度目で、今回は別荘の購入を検討していたため、長く滞在していた。話を聞きながら、久々に彼の料理を味わう。
「それで、あーくんとはどう? ちゃんと話はできた?」
 敦士が風呂へ行くと、直広はさっそく尋ねてきた。
「見ての通りだよ」
 勉強机に向かっていた史人は、直広を振り返って笑う。間仕切りは消え、二人のベッドはつながっていた。


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