on your mark番外編34/i | ナノ


on your mark番外編34/i

 土曜の朝、いつもなら昼まで眠っている史人は、アラームの音を止めた後、起き上がった。午前中に配送されてくるものを受け取るためだ。まだ眠たい気持ちを振りきる。敦士と両思いだと分かってから、毎晩のように体を求めた。
 体を重ねて、擦り合うだけで、史人は満足している。だが、来週末には直広達も帰ってくるため、この土日でちゃんとした関係にしておきたかった。
 史人は勉強机の上にあるノートパソコンを開き、注文したものを確認する。午前中指定は間違いなく、そわそわしながら、リビングダイニングへ出た。
「おはよう」
 キッチンから声をかけられ、史人は一瞬、驚いた。敦士がマフィンに切り込みを入れ、朝食の準備をしている。
「あ、おはよう。あーくん、組に行ったんじゃないの?」
 敦士は土曜の朝から昼、あるいは夕方頃まで、たいてい仁和会か市村組へ顔を出している。今日もいないと思っていたからこそ、自宅宛に午前中指定で注文していた。
「今日は行かない。ベーコン、レタス、トマト……チーズもはさむか?」
「うん」
 史人はまずバスルームで顔を洗い、注文した品が届いた時の対処法を考えた。本来の予定では、敦士が帰ってくるまでに、自分で浣腸して、アナルの洗浄と拡張をしておこうと思っていた。そのために必要なものをインターネットで購入したのだ。
 電子音にあせった史人は、慌ててバスルームを飛び出した。まだフロアまでは来ていない。外のエントランスからボタンを押しているだけだ。急いでパネルのそばへ行ったが、敦士がすでに対応していた。
「あ、あーくん、俺が、出る。俺のものだから」
 宅急便や手紙の類は、急ぎでなければ、管理人が預かってくれる。敦士はエントランスの扉を開けて、配送会社の人間を中に入れた。玄関へ行こうとすると、うしろから抱き締められた。
「あーくん?」
「その格好で出るな」
 ハーフパンツに大きめのTシャツは普通の格好だと思ったが、むき出しになっている左肩へ彼のくちびるが触れる。
「ここにもある」
 鏡はないものの、史人はその言葉でキスマークがあるのだと分かった。
「着替えてくるっ」
 クローゼットを開き、首元が隠れそうなシャツと薄手のストールを探している間に、二回目の電子音が鳴る。
「あーくん! 俺が出るから!」
 部屋からそう叫んだ。着替え終わると同時に、小箱を持った敦士が笑みを浮かべながら、部屋へ入ってきた。史人はベージュのパンツを上げ、ボタンを閉じようとしていたが、敦士と小箱を見て、手をとめる。
「参考書か?」
「うん、そう、参考書」
 敦士から小箱を取り上げようとすると、彼は意地悪そうに笑った。
「アダルトショップの参考書か?」
「あーくん!」
 小箱は無地のダンボールで、貼付されている伝票の品名にも日用雑貨としか記載がない。だが、敦士は会社名を知っているのだろう。笑いながら、こちらへ差し出してくれた。
「コンドームなら、俺が買ってある」
「ちがうよ!」
 史人は彼から隠すように、勉強机の下へ小箱を置いた。
「開けないのか?」
「コンドームじゃない」
「分かってる。そのサイズだと、ボトルのローションとか、拡張ができるおもちゃも入ってそうだな」
 図星だったため、史人はくちびるを結んで、恥ずかしさからうつむいた。積極的だとみだらだと思われそうで怖かった。
「あや」
 伸びてきた手が頬へ触れる。


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