on your mark番外編32/i | ナノ


on your mark番外編32/i

 敦士は目を丸くした後、「あや」と名前を呼んだ。互いにまだTシャツを着ていたが、敦士は上半身も裸になり、史人の服も脱がせた。絡まるように抱き合いながら、ベッドへ転がる。太股に当たる熱いペニスが興奮をあおった。
 キスをして、手を握り合い、ペニス同士を擦り合わせる。敦士の指先が徐々に、アナル付近へ触れた。身をすくませると、彼は手をとめる。
「怖いか?」
 史人は正直に頷いた。
「分かった」
 敦士は機嫌を損ねず、ペニスを擦り合わせて、快感を与えてくれる。部屋の中は暑くはないものの、触れ合った肌は汗ばんでいた。足の間に敦士のペニスをはさみ、体を密着させる。彼と自分の腹の間で擦れるペニスに、史人は声を漏らした。
 アナルセックスの方法は知っている。両思いだと分かった今、すぐに体をつなげたい気持ちはあったが、未経験の領域へ進む怖さもあった。何より、今の幸せな状態をできるだけ感じていたい。
 腹の間で射精した後、史人は心地よい疲れとともに目を閉じた。
「あや、シャワーで流さないと」
 うん、とこたえたつもりだったが、史人にはその後の記憶がない。
 アラームの音も聞こえず、敦士に体を揺すられて、目を開けた。
「あ、あーくん?」
 敦士のベッドで寝ていた史人は体を起こす。
「おはよう。朝食できてるから、準備しろ」
 いつもより三十分遅い時間だ。だが、遅刻するほどの時間ではない。史人は大きく伸びをして、バスルームへ向かった。鏡に映る自分を見て、首筋にある赤いしるしに触れる。鏡の中の自分は頬を染めていた。
「あーくん」
 準備を済ませて、キッチンへ行く。敦士はジューサーの中へオレンジとイチゴを入れていた。彼の髪はまだ少し跳ねているが、思わず見惚れてしまう。
「俺の大好きな組み合わせだね」
 史人のもっとも好きな組み合わせで新鮮なジュースを作った敦士は、グラスに移して、こちらへ差し出した。
「パパ達よりも、あやのこと知ってる自信がある」
 史人は笑みをこぼし、敦士の体を抱き締めた。顔を上げると、彼からくちづけられる。
「行きたくなくなってきた」
 冗談で言うと、敦士も笑う。
「今日は冷やし中華とから揚げにしてやる」
 幸せ過ぎて、史人はしばらく放心状態になった。

 気を抜くと、にやけてしまうため、授業中もくちびるを噛み締めて、真剣に学んでいるふりをしていた。何かあったのか、と聞かれてもこたえられないが、誰かに言いたいことではなかった。
 敦士に付き合っている人はおらず、彼は自分と同じ気持ちであり、ずっと一緒にいてくれる。思いを告げたら、彼を縛ってしまうと考えていた自分が馬鹿らしい。自分達は特別な絆で結ばれている。
 いつもなら苦痛に感じない授業も、今日だけは長いと思った。実習がないため、一緒に帰宅したが、電車の中で敦士を見ていたら、彼は急に笑い出した。
「そんなに見つめなくても」
 史人はひざの上に置いた鞄の下で、こっそり敦士の手へ触れた。小指と小指が触れ合う程度だ。彼が優しくこちらを見つめる。史人は喜びと照れから、はにかんでうつむいた。

 玄関から入ってすぐ、敦士がキスを仕掛けてきた。求められることは嬉しく、ほんの少し考えていた、もしかすると、自分に合わせてくれているだけかも、というネガティブな思考は消える。
「っん、あーくっ」
 くちびるの端からあふれそうになった唾液さえ、敦士は丁寧になめた。
「夕飯の用意してくる」
 そっと髪をなでた敦士は、キッチンへ向かった。史人は鞄を肩から外し、あとを追う。


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