on your mark番外編33 | ナノ





on your mark番外編33

 物足りない。部屋へ鞄を置き、冷蔵庫から冷やし中華の具材を取り出す敦士へ抱きついた。
「あや」
 敦士の声は笑っている。史人は手のひらを滑らせ、指先で下半身へ触れた。彼のそこは大きくふくらんでいる。
「こら」
 今度は責めるような口調だった。敦士が隣にいるのは当たり前のことだった。当たり前すぎて、好きという感情さえ特別なものだとは思えなかった。自覚してからはもう、冷静になることができない。
 史人はひざまずき、敦士のジーンズへ触れた。チャックを下ろして、下着の間からペニスを取り出す。
「あや、俺の必死の努力をムダにするのか?」
 あおるように敦士を見上げた。わざとらしく舌を出して、彼のペニスをなめる。
「くそっ」
 敦士は乱暴に言ったが、表情は笑っていた。すぐに体を抱えられ、彼のベッドの上へ下ろされる。服を脱がせあい、昨晩と同じようにペニス同士を擦り合わせた。気持ちいい、と素直に言葉を発する。一度、射精すると、気持ちが少し落ち着いた。
 抱き合ったまま、腹が鳴く音にどちらともなく笑い出す。
「好き」
 足の間で、敦士のペニスがたち上がる。
「あーくんが好きすぎて、変になりそう」
 敦士は体を起こしたが、彼の性器は勃起していた。史人が手を伸ばそうとすると、それを遮り、顔を近づけてくる。
「しゃべるな」
 くちびるをふさがれ、史人は目を閉じた。自分の中心も熱が再燃する。もう一度、擦り合って射精した後、敦士は先にシャワーを浴びるよう促した。
「久しぶりに、一緒に入ろ?」
 太股の間や腹の上の精液を指先ですくい取り、ティッシュで拭いた。嫌悪感はない。不意に敦士を見ると、彼はまた勃起していた。無言のまま手を引かれ、バスルームへ入る。
「あーくんと一緒に入るの、何年ぶりだろ」
 高校の時にはもう別々に入っていた。たくましい体を見つめ、突き上がっているペニスを手でしごく。手で感じる熱そのものが、彼の愛の深さのような気がして、史人は背伸びをしてキスをねだった。
「反則すぎる」
 敦士はそうつぶやいたが、キスにはこたえてくれた。ボディソープを泡立て、ふざけながら、彼の体を洗う。彼も同じように体を洗ってくれた。
「昔みたい」
「そうだな」
 帰宅してからシャワーを浴びるまで、二時間近くかかったようだ。史人はキッチンに立とうとする敦士へ、今夜はピザでも注文しようと提案した。
 
 ソファへ寝転ぶと、敦士がひざを貸してくれる。彼の体に残る傷痕を見て、幼心に感じていたことを思い出した。直広や健史のためだけではない。形成外科医になれば、彼の傷痕を治すことができるかもしれない。そう考えていた時期もあった。
 敦士自身は傷痕には無頓着だった。テレビで見た、と前置きをして、傷痕を消せると話をした時、敦士は首を横に振った。
「目に見える傷なんて、とっくに癒えてる」
 史人はその時、敦士を傷つけたのではないか、と悲しくなった。だが、敦士は史人の手を握り、「目に見えない傷もあったけど、あや達がいるから平気になった」と続けた。
 電子音が鳴り、敦士が、「俺が行く」と立ち上がる。史人はソファへ座り直し、小さくほほ笑んだ。

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