on your mark番外編26 | ナノ





on your mark番外編26

 敦士の手が下着を下ろした。涙でにじむ視線の先に、勃起した自分の性器を見つける。史人は恥ずかしくて、顔をそらした。太股でとまっている下着は、敦士の唾液と自分の先走りで濡れていて冷たい。
「っ、あーくん、も、いい。もう、やだ」
 ベッドへ押さえつけていた手が離れていく。史人が安堵した瞬間、ペニスに絡んだ熱に声が漏れた。
「ひっ、ア、あーく、ッン」
 上半身を起こそうとしたが、力が入らない。敦士の舌とくちびるが、史人のペニスへ快感を与えていた。くちびるで挟まれ、舌でなぞられた熱は、しだいに果てを求めていく。いけないと思うのに、その快感をもっと与えて欲しくて、史人はやめてと言えなかった。
「あ、ァ、い、いくっ」
 ぎゅっと目を閉じた。腰から突き抜けてくる恍惚とした喜びに、体が震える。自分でするのとは大違いだった。腹の上に飛んだ精液に触り、史人はまだ軽くたち上がっているペニスをつかむ。
 最後に自慰行為をしたのはいつだろう。無意識にまだ熱いペニスを手でしごいた。その手を大きな手が包む。史人は目を開けなかった。大きな手は史人の手を離し、ペニスをなめる。気持ちよくて、先を促すように腰が動く。
 もっと、と言った。もっと快感を与えて欲しかった。史人はもう一度、射精した。目を開けると天井が見える。喉がからからだった。勉強机の上にあるグラスを取るために起き上がる。
 水を一気に飲み干し、腹についていた精液も、足に引っかかっている下着も気にせず、史人はベッドへ転がった。とても気分がいい。史人は深呼吸してから、目を閉じた。

 大きく寝返りをしたら、片足がベッドから落ちた。驚いて目を覚ます。史人はこめかみを押さえた。
「きぶん、わる」
 嘔吐するまで飲んだことはないが、史人の二日酔い症状は決まって頭痛だった。
「あー」
 ベッドに座り、携帯電話を探す。
「あれ?」
 史人は敦士のベッドにいた。気合いを入れて、立ち上がり、仕切りの向こうをのぞく。自分のベッドは空だった。新しいシーツになっているベッドの上には、携帯電話が置いてあった。十時に鳴るはずのアラームは削除されている。
「うーん」
 史人は頭痛にうなりながら、昨日の飲み会の記憶をたどった。頭痛から、酔っていたことは確かだ。アラームを削除したのは敦士だろう。二日酔いで苦しむと知っているから、できるだけ寝かせてくれようとしたのだ。
「シーツも汚したんだろうな」
 吐いていないとは思うものの、確信は持てない。あるいは、水をこぼしたのかもしれない。史人は扉を開けて、リビングダイニングへ出た。テーブルの上には胃腸薬が置いてあり、冷蔵庫を開けると、予想通りの飲み物が入っていた。
 果汁百パーセントのオレンジジュースを吸い上げながら、史人は何気なくケーキボックスを見つめる。
「あ」
 ペットボトルへストローを入れて飲んでいたジュースが、手から滑り落ちた。足元にジュースが飛び散る。史人は慌てて、冷蔵庫を閉め、左手で股間を押さえ、その場にしゃがんだ。ペットボトルを立てて、四つ這いのまま玄関のほうへ向かう。
「やばい」
 史人は小声で繰り返した。玄関へ向かったのは、敦士の靴があるかどうかの確認だった。幸い、彼は出かけている。そのままの姿勢で部屋まで戻り、携帯電話を手にトイレへと向かう。
 混乱している記憶を整理するように、まずは目を閉じた。ハーフパンツの紐を解き、下着を下ろす。史人は自分の手で性器とその周辺へ触れた。手をうしろへ回し、アナル付近も確認する。
 史人は手を洗って、便座へ座った。うしろは何もないが、前に触れられ、口でされた時の生々しい感覚は、体がしっかりと覚えている。

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