on your mark番外編25 | ナノ





on your mark番外編25

 握った手を開き、史人は敦士の手を自分の胸に当てた。史人はアルコールが回ると、顔だけではなく、首筋から胸元にかけても赤くなる。ほてった体よりも熱い敦士の手のひらを感じ、目の前の彼を見つめる。
「あーくん」
 甘えるように腕を伸ばすと、敦士は手を取ってくれたが、口元には不自然な笑みを浮かべていた。
「あや、酔ってるから許すけど、悪ふざけはやめろ」
 素早く抱えられ、ベッドまで運ばれる。下ろされたくなくて、敦士の体へ抱きついた。
「ふざけてない。あーくん、したことあるよね? おとことも」
 巻きつけた手を解かれ、史人はベッドから敦士を見上げた。彼は大きな溜息をつき、返事もせずに部屋を出ていく。
 史人は体を丸めて、横を向いた。高校の時、敦士へ手紙を渡して欲しいと頼まれた。学年は一緒だが、面識のない相手は、同性の史人から見ても愛らしい顔だちをしていた。手紙には封がしておらず、史人は敦士へ渡す前に中を読んでしまった。
 もう一度だけ抱いて欲しいという主旨の内容に、史人はショックを受けた。渡したくはなかったが、敦士へその手紙を渡すと、彼は中を確認して、すぐにゴミ箱へ入れた。あの時、本当は問いただしたかった。
 嗚咽をこらえ、あふれてきた涙を拭う。あの時の自分のショックは、敦士が男を抱いたことに対してではない。いちばんそばにいる自分には見向きもしなかった。そのことに対する怒りと悲しみだった。
 今も相手にされていない。兄弟以上の絆はあるのに、恋人のように愛してもらえないのだと思うと、新しい涙が流れた。
「あや」
 ベッドに座った敦士が、グラスに注がれた水を持ってくる。
「いらない」
 背中側にあった毛布を引っ張り、史人は敦士の視線から逃れようとした。
「明日、頭痛に泣くぞ」
「いま、ないてるのは、あーくんのせいだから」
 敦士の手が毛布を引っ張り、史人の顎へ触れる。
「史人」
 直広や遼がとがめる時の響きにそっくりだ。史人は口をとがらせる。
「みずなんかいらない。キスして」
 敦士は静かに首を横に振る。どうして、と叫びだしたいのをこらえ、史人は上半身を起こし、彼の頬を両手で包んだ。目を閉じて、勢いよくキスをする。くちびるへ触れるだけのキスは、小さな音を立てた。
 自棄になって、そのまま何度もキスを重ねる。くちびるの間から嗚咽が漏れて、涙がつたった。敦士はその涙を拭い、七回目か八回目のキスを受ける。そして、ベッドへ押し倒してきた。
 あまりにも強い力で押されて、史人は驚いた。上にまたがった敦士は、軽く触れるキスの後、むさぼるようにくちびるへ吸いつき、舌を入れてくる。
「ぁ、っあ、ん、ん、う……」
 敦士はくちびるで、こめかみからうなじ、頬から首筋を愛撫し、最後に乳首を刺激してきた。
「あ、あーくん、ん、ぁあ、だ、だめ」
 舌で乳首をなぶられ、甘噛みされ、史人はくすぐったさと快感から身をよじった。下着に押さえ込まれている中心が、熱くなる。望んだことなのに、なぜか怖くなった。敦士は口だけを使って、史人の指先にまで刺激を与えてくる。胸元からへそまでたどったくちびるが、下着越しにペニスをなぞった。
「ぅ、ア、や、そこっは、あーくんっ」
 手で敦士の頭へ触れようとすると、彼は難なく両手をひとまとめにして押さえ込む。風呂に入る時にこっそり抜く程度だった。下着の上から口で挟まれたり、なめられたりするだけで、史人のペニスは大きくなっていく。

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