君のそばなら





二人で一緒に夕食を食べ、片付け終えた後、白石はゼミのレポートがあるとかで自分の部屋に籠ってしまった。
俺はと言うと、しばらく発表もレポート提出もないので、そのままリビングに残り、録り溜めしていたお笑い番組や海外ドラマを見る。
勿論、白石の邪魔にならないように音量は最小限だ。
レコーダーをチェックすると予想以上に溜めていて驚いたが、どうせ明日の講義は午後からなので、多少の夜更かしは平気だろう。
相手が忙しい時は、こうやって一人での時間を楽しむことを覚えた。寂しくないとは言わないが、俺だって忙しくて、白石をほったらかしにする時がある。それに忙しい時はお互い、少ない時間でも2人の時間を作ろうと努力するし、相手の忙しさも理解している。
これが中学の時なら喧嘩になっただろうと思うと、少しは大人になったのだろうか。


夢中になってDVDを見ていたが、気が付くととっくに深夜を回っていた。白石が来た気配はなかったように思うが、もう眠ってしまったのだろうか。
ほとんど見終わった事もあり、テレビを消し、寝室を覗きに行く。
同棲を始めた時から、個人の部屋は別だが、寝室は一緒にしている。最初は恥ずかしかったが、今では慣れたし、忙しい時に少しでも白石の顔を見られると安心した。
寝ていた時に起こさないため、そっと寝室の扉を開いたがいない。
と言うことは、まだ自室だろう。白石の部屋へ行き、ドアをノックしたが返事がない為、勝手に入る。俺が入ってきたことにも気付かず、白石はどこか眠そうな顔で、パソコンを前にしていた。
「蔵、あんまり根詰めすぎん方がえぇで」
声を掛けると、はっとした顔で白石が顔を上げ、俺を探すように目線をさ迷わせた。
「…あぁ、謙也か。もう後少しで終わりそうやねん。…やねんけど、眠くて頭が働かん」
「眠気覚ましにコーヒーでも入れてこよか?」
その言葉に苦笑し提案するが、白石の反応は芳しくない。
「…コーヒー…コーヒーなぁ…、うーん…入れてもらおうかな。気分転換するわ」
少し悩んだ後に、そう言うとリビングに行くと言って立ち上がった。



20100503