私のスタンドの能力がいささか暴力的だったためか、始めからあんまり女子っぽい扱いは受けなかったように思う。個人的にもそちらの方が気は楽で、ときどきジョースターさんからレディみたいな扱い方をされるとどぎまぎした。 男たちのむさくるしい半裸を前にしたって眉ひとつ動かさない私に、ポルナレフなんかはもっと恥じらえよ!などと力いっぱい言ったものだ。 「で、どうなんだよ。いい加減吐いちまえって」 それだというのにまさかこの私と、旅の仲間の誰かしらが恋に落ちるなどとは私を含む誰ひとりとして予想だにしなかった。そもそも、そんなことをしている暇のある旅だったろうか。 「あんまり言うとむしるよ」 「……何をだよ」 「ナニがいい?」 「おい」 我ながら下品なことを口走ったな、と思った。ジープの荷台に彼と肩を並べて座り、快適とは呼べない揺れに嫌気がさした頃の会話だった。日差しは屋根などという上等なもののない荷台に容赦なく照りつけ、後部座席の空いた窓からは空条承太郎がふかす煙草の煙が流れてきて、私たちの目の端に一筋の淡い線を引いている。優雅なことだ。 もう、暑い、とぼやくのも面倒くさい。 「いいじゃあねえか、こんな旅なんだからよ。潤ってる奴を小突き回す権利くらいあるだろ」 「潤い、ねえ」 私のスタンドが私の首にその華奢な腕を巻きつけてまどろんでいる。この暑いのに。 自分のスタンドの顔をじっと眺めて、肩に当たる彼女の胸の感触に、やっぱり私はどっちかというと胸がでかいな、と自画自賛してみる。実際、彼女と私のスリーサイズが完璧に一致していることは私だけが知っていればいいことだ。 学校での初対面の出会いしな、お互いに敵かと勘違いし合ってこの相棒でスタープラチナに突進したりくんずほぐれつしたりしていた間もこういった感触がほぼダイレクトに空条にも伝わっていたと思うと今さらながら奇妙な気持ちになる。その場で何か色っぽいことを考える余裕はなかったのだし、恥ずかしいともまた違うような、しかし恥ずかしい気持ちもあるような。……もちろん彼とは恥ずかしがるような関係でも、もうないわけだが。 二度目になるが、そもそも、この旅はこんなことを考えているようなしているような暇があるような悠長なものではないはずなのに。 車体がぐらぐらと揺れる。無意識に暑い、とこぼした私の隣で、ポルナレフが同じように暑い、とぼやいてうなだれる。色白の彼の肌にこの刺すような日差しは毒だろう。会話が途切れ、私は苦し紛れに目を閉じた。 ×
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