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「うざいから消えてくれない?」


取り巻く悪態、嫌味が今でも離れない。苦しくて辛くて、逃げ出したい思いばかりが募っていた。彼とは何の関係もないのに、彼は運動部で、私は文化部で、何故か声をかけられた。大好きな絵や石膏に囲まれているはずなのにこびりついたように彼の顔が離れない。帰ろうとするときいつも時間は重なる、その時必ずそう言われていた。一年生の頃はとてもひどくて、私は泣きそうだった、心が病んでしまい手首を切るまで陥った。

晴れて二年生になり、クラス替えも行われる。狙うは彼と違うクラス、お願いだから遠く離れたところがいい。神様は私を見放したようだ。


「ナマエ、一緒のクラスだね!」

「そ、そーだね、これからもよろしくおねがいします」

「…大丈夫?顔、青いよ」

「そう?平気です」


彼の名前は出さなかったけど友達も友達ですごく心配してくれた。ありがたいと思いつつ、私は指定された席に腰を下ろす。友達は後ろの席で、彼は二つ列を越した席に座るそうだ。怖いという心と自分でもわからない緊張でお腹が痛くなり、机の上に突っ伏した。ガンガンと椅子を蹴って「ダイジョーブかぁ〜?」と笑いながら聞いてくる。
これは私に対しての新手のいじめかよ。


「よぉーし!席替えするよぅ!」


いつの間にか私のクラスでは席替えの時間になっていた。背が高いという理由で彼は後ろの席になる。どちらかというと小さい私は前に行きたかったけど、問答無用らしい。
委員長が私の目の前にすごいキラキラした笑顔で、くじを出された。全知全能の神様に願う、本当に後ろの席はやめてください。


「あんたって本当にくじ運ないよね」

「やめて、そういうの、マジで冗談として笑えないので」

「うっわぁ、あんた顔青いって、ねえやっぱりダメだよ。
ナマエ、保健室行こうって」

「大丈夫、ですから、そんな…っう」

「ヤバ、っ待ってて!」


バタバタと走っていた友達は先生のところへ行った。
先生は私を運ぼうとしたとき、誰かが私の腕を引っ張って背中に乗せたんだと思う。
ふんわりと甘い香りが鼻についた、誰だろう、お菓子が好きな人なんだろうなぁ。
あったかい背中に包まれて保健室に運ばれるなんてとっても嬉しかった。
友達の声が遠くで聞こえたけど、私は首を横に振った、大丈夫、すぐに戻ってこれるから。


「あ…り、がと」

「…いままで、意地悪してごめん」

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