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頭の中は花畑だ。
勉強だってしたくないし、もう、イケメンと結婚している妄想だけをしたい。実際はどうなのかは、知っているだろう。地味で、クラスからちょっと浮いている存在。
「お前の創造豊かな脳内は重宝されるべきだと思うぞ」
「野崎君、最近私のこと発案者としてしか見てないよね」
紅茶とチョコレートを手渡されて、私はありがたく受け取りながらも、苦笑を浮かべた。アツアツの紅茶に口を付けたときに、考えてみれば野崎くんもイケメンだよなとしみじみ思っていた。野崎君は新しい話のストーリーを黙々と練っている。
「野崎君にイケメンの知り合いいる?」
「鹿島ってわかるか、あと堀先輩…あ、御子柴」
「イケメンでも鹿島さんが出てくるとは思わなかった」
「お前なら御子柴を手なずけることは簡単じゃないか、地味な割に話術うまいし」
野崎君はストーリーを書いた紙を私に手渡して、言葉を書いてほしいと言わんばかりの顔をしている。それほどボキャブラリーが多いわけじゃないのに。紅茶をもう一口つけてから、私は手渡された紙を一瞥した。その時、扉が唐突に開かれた。驚いて紅茶のカップを落としそうになったけどぎりぎりセーフ、あ、紙落ちた。誰が扉を開けたのか顔を上げて確認すると、赤い髪の毛の、かっこいい男の人だった。確かこの人は御子柴くん。
「野崎!今度シンデレラストーリー書いてくれ!」
「御子柴、もう少し落ち着け。なんだシンデレラストーリーなら前に書いただろ」
「じゃあアフターでもいいから、スピンオフでもいいから!」
女子を見かければ甘い言葉を吐いている御子柴君が、男子生徒と、野崎君と漫画の話をしているなんて信じられない。私は夢でも見ているんじゃないかと心配になってきた。というか、御子柴くんってこっちの世界の人間なのか。
「ナマエ、大丈夫か。目が点になってる」
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