log | ナノ
葬儀屋にとって人が死ぬと儲かるといえど、大変な作業が待っているので、夜中に電話が来ると、自分が何をしているのかわからなくなる時がある。そんな愚痴をつい最近知り合った赤毛の男に漏らしていると、一旦黙り込みそしてようやく笑ったかと思うと、いきなり変なことを言い出した。「そりゃ、夜中にしか戦えない化け物が強さを得た証拠だヨ」夜中にしか戦えないって、それは夢遊病患者のことを言ってるんじゃないか。私はその男の言葉に妙に引っかかりながらも「それまたデキた冗談ね」なんて言うと、また赤毛の男は笑った。


その日を境に、夜に電話が鳴り響きまともに寝られる日が少なくなってきた。

だが、葬儀屋はここ以外にもたくさんあるのに、なぜ私に仕事が舞い込んでくるのか理解できなかった。このままでは、この町の人口も知らず知らず減っていくのではないか、なんてバカげたことまで思った。仕事に追い込まれて一か月、また一か月と過ぎ去っていく。バタバタする毎日だ。だが…。


「どうしよう、風邪ひいた」


頭がボーっとして、考えられない自分の体温を測ると熱があることが分かった。だが、仕事はこれからある。ほかの業者に頼むしかない。徐に起き上り、携帯電話を取り出して知り合いの業者に電話をかけた。
明るい声で対応してくれて、私は布団へ戻って寝ると決め込んだ。


数分後、目が覚めて起き上ろうと肘をついた時、布団じゃない感触に寝ぼけがすっ飛んだ。自分の周りを見たら、知っている人も、家具も、全部なくなっている。いいや、なくなっているんじゃなくて、これは私が移動したのか。左腕に違和感があってゆっくり視線を下すと、そこには手点滴につながる針が見える。


「あ、目が覚めたんだね。オハヨー」


赤毛の男が片手にお盆をもって、扉を開いて登場した。そういえば、最近は忙しくてこの男とめっきりあっていなかった。しかし、なぜ私がここに居ることに陶然としていて、軽快そうに言葉をかけていられるのか不思議でたまらない。


「いやいや、ナマエは寝坊助で助かったヨ。ずーっと眠ってたから誘拐なんてチョロイチョロイ」

「ゆう、かい?」

「やっぱ頭が追い付いてないんだネ、でも心配しなくて大丈夫。俺はね、ずっとお前が欲しかったんだ、けど、お前は俺がどんなにアタックしても気づかないから、こうして腕の中に閉じ込めてしまえば、直に好きになるって思って今はこうしてここに居るんだヨ。ようこそ、宇宙海賊春雨第七師団へ、歓迎するよ。ナマエ」

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