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光を恐れている彼女は俺がカーテンを開けると目をつぶる。
理由を聞いてみたら、単純だった。

光を見ると嫌なことを思い出すらしい。



ここまで弱ってしまったのは全て俺のせいだ。彼女のことを何も考えずにあちこち連れ回して、光を怯える程の心の傷を負わせて。あのとき、もっと早くに彼女を守ってさえいればこんなに苦しまなくて済んだのかもしれない。弱い俺には何もできない…のかな。

傷を癒すために何かきっかけを作ろうとツクモちゃんや无ちゃんに手伝ってもらったけどその行動は悪い方向に転んでしまう。
今日も俺は彼女がいる部屋へ向かう。片手に食事を乗せたトレーを持って。彼女はずっと前から保護対象だったから、今では彼女の好き嫌いを熟知している。

数回ノックをすると、透き通るような声が聞こえた。


「ツクモちゃん?」


「ううん、オレだよ、與儀」


そう言うと、彼女は室内で歩いたのか、耳に金属が擦れる音が聞こえる。平戸さんが暴れないようにと念のため付けてある鎖。俺が来ることにそんなに嬉しかったんだね、やっぱり、ここにひとりでいるのは寂しいよね。


俺だったら、君がいないと仕事も、検査もいけなくなるくらい辛いんだもん。だから、今度から俺もここで仕事したほうがいいよね。

「好きなものばかり持ってきたんだよ、ほら、たんと栄養つけて早く元気になって」

テーブルに置いて、ベッドの端で縮こまっている彼女。足首には頑丈そうな鎖。


「怯えなくていいよ、もうあんなことしないから」


嫌なことを思い出さなくていいよ、今度は暴れないから。もう、俺は暴走なんてしないから、暴走の果てに君を殺そうと襲い掛かったりしないから、お願い。俺から逃げないで。弱かったから、俺が非力だったから自分を抑えられなくなった。もう過去を取り戻すことはできない。俺から逃げないように、寂しくさせないようにこの部屋に閉じ込めておいたのに、全然効果がないのはどうして。


花礫くんには逆効果だと言われたけど、俺は信じるよ。
ニャンペローナに囲まれて、可愛いうさぎさんたちに囲まれて、ふんわりと沢山のレースとフリルを使ったドレス。磨かれた、スパンコールをたくさんつけたパンプス。頭にはリボンまでつけていた。
早く、俺のことを受け止めて。

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