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懐柔するのは苦手だ。自分はつんけんした性格で、嫌われ者だからあの男の人みたいにやわらかい笑顔と柔軟性の持った態度なんて取れない。いいや、取ったことがない。今日も資料室で自分の出生を調べるけれどなかなか出てこない。

売られたといっても、闇ルートだから犯人が捕まっていたら何かしらわかるだろうと思ったのに、膨大な資料のせいかまったく見つけられない。

行き止まりに差し掛かったようで、私はため息を漏らすばかりだった。そんなとき、彼が資料室に訪れた。普段なら、こんなかび臭いところになんか来ないのに。何か事件でもあったんだろうか。開かれた扉で佇んでいる彼を見ると、にっこり笑って近づいてきた。


「あ、こんなところにいたの?一緒にご飯食べに行こうよ」


おしゃれな、座る位置が高い椅子に腰かけていたから、與儀さんは私より背が低く見える。與儀さんは両腕を伸ばして私を抱きしめようとする、私は首を横に振って「いかない」と伝える。
與儀さんは納得がいかないような顔をして、伸ばしていた腕はしまい込んで組んだ。怒っているように見えたので、私はおずおずとあることを聞いた。


「與儀さんは、皆さんと食べないんですか…?」

「え、や、みんなと一緒に食べようって意味なんだけど、あれー」


癖のある髪の毛をなでる與儀さんは私より戸惑って見えた。特に、その要件以外ないのなら、もう話すことはない、私は資料と向かい合う。


「…私は、一人で平気ですから」

「そんな意地張らないの!ほら、行くよ」


資料を奪うなり、私の腕を引っ張って與儀さんの胸へダイブした。強く打った顔が鈍く痛い。顔を上げて私が抗議しようと思い顔を上げた。


「っ、與儀さんっ」

「ん?どうしたの、おなかすいてないの?」


すぐ近くにある與儀さんの表情にどきりと胸がはねた。冒頭に記したとおり、私はやさしい態度なんて取れない、できると言ったらつんけんした態度だけ。

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