log | ナノ
戦争が集結する前には必ず、終止符を打った人間の名前が残る。それを望んで発言したわけじゃない、先人たちは私と同じで誰も殺したくなかったんだ。暗闇と死臭と嘆きをさまよってたどり着いた先には散らない花が咲いていた。



ダメだった。

他とヒト部隊を止めたとしても、私に反感を買っている者たちや敵対する彼らが許せない彼らは今までに見せなかった猛者の牙を剥いた。


涙を流す暇があったら私は今すぐに立ち上がって、彼らが傷つく前に、誰かが死ぬ前に止めなきゃ。
船長は私の腕を掴んで、引き止める。振り払おうとしても力量が違う。そのまま腕を絡めて船長は私を抱き寄せて頭を撫でた。


「よく言った、ナマエ。あとは俺たちに任せとけ」

「わ、私も行く!私は最後まで見たいっ」

「…わかった、離れんじゃねぇぞ!」


ビュンっとひとっ飛びした船長にしがみついていると、木の上からでは見られなかった光景が映る。これでは、支配される前に支配したとしても再建する場所が場所すぎる。腐敗した死体やそれを突っつく鳥、熾火が残っていて、遠くの方では燃え続けている。私たちは今まで、何をしていたんだ。


「…私は、今まで何のために戦ってたんだろう」

「知らね」

「アンタ鬼か!」

「今度は目的あって戦うんだろ!無駄なこと考えんな!」


風を切る彼はまっすぐ前を向いている、気がつけば目下に麦わらの仲間が戦っている。
止めさせようと必死に働いてくれている、何も恩返しすることができない私たちに。


「船長、ありがとう」

「なんだいきなり?」

「ううん、お礼を言いたくなったの」


そう言って笑うと「オメェ、初めて笑ったな!」そう言って愉快そうに船長は笑った。そして、戦っている彼らを止めるために敵方の頭をみつけた。私は大声でここで落としてというと、船長は力強く投げ飛ばした。

目の前に現れた私にきっと強く睨みつける、私は手を広げる。それだけで、相手は何故か涙を流していた。ぼろぼろ流す姿は私と同じだった。そうか、きっと彼も。

彼らも同じ気持ちだったんだ。



「もう、戦いません。戦いたくありません」


右腕に銃弾がめり込んだ。鈍痛で視界が歪みそうになるけど、片手で圧迫止血をしてみたら目が覚めた。船長を探したけど乱痴気騒ぎが収まらない限り見つからない。


敵方の頭は「撃つな、待て」と一言残すと、兵隊たちは私に向かっての罵詈雑言を激しくさせた。


「今頃ふざけたこと言ってんじゃねぇ!」

「これまでお前たちの民族にどれだけ殺されたかわかってんのか!」

「俺の大事な人を返せ!」

「それは私たちも一緒です」


反論した時、シンと静まった。騒ぎが、この一言で収まった。カランと武装していた兵士たちが武器や鎧を落とす。重たそうなそれも、使い古したそれも、数え切れないほどの人の涙や血が染み込んでいる。

そして、私はため息混じりに言った。


「終わった」






「やっと起きたな!ニッシシ!」

「…あれ、私」


柔らかいベッドから体を起こすと、船長はバンバンと私の背中を叩いて「オメェ、やっぱすんげぇな!俺の仲間になれ!」と言っている。脳天気にしゃべっている船長をほっといて窓から外を覗き込むと、人種を問わずに看病をしている光景。

炊き出しもしているし、落ち着いた人から自分の里へ帰っていく。掲げられたものが目に入って私はそれを目を細めながら見た。


「は…た?」


私たちの民族のロゴマークと敵だった民族のロゴマーク。その間には多分、麦わらたちの海賊旗のマーク。私が求めていた彼らとの関係は、あれでいいんだよね…。間違って、なかったよね…。
二三回ノックをしたあとに入ってきたのは、私によく世話を焼いてくれたナミが入ってきた。もう彼女ともお別れかな。


「目が覚めたのね、ナマエ」

「ああ。ナミ、世話になった、ありがとう」


そう言って私は椅子にかけられていた自分の服を手にとってドアへ向かったが、その行く手を阻んだのは紛れもなくナミ。


「待った!」

「え」

「そこでグースカ寝てる奴が言ってたの聞いてた?」

指を指す方へ視線を辿わせると、先程まで起きていた船長は椅子にもたれかかって寝ている。記憶の糸を手繰り寄せて私は「あ」と声を漏らした。

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