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清水先輩は私の一コ上の先輩。名前が体を表している、清楚で一つ一つの行いが気品に溢れている。ひとつ年上っていうのは、何故か先輩ぶりたいという事例が多くないことはない。けれど、清水先輩はそんなことはなかった、先輩として丁寧に仕事を教えてくれるし、かっこいいし、気遣いだってできる。

私とは大違いだ。

なぜか、私は胸が痛い。自分がひどく情けなくて弱くて脆くて、胸が痛い。


「清水先輩は綺麗系で、谷地さんはかわいい系だよな。そういやあとひとりいたよな、マネージャー、なんつったっけ?変な苗字じゃなかった?」

「ミョウジだって、ほら、なんかギャルっぽい感じの奴いたじゃん」


地毛の茶色が嫌いだった。

傷んだ髪の毛のようにバサついていて、茶色い髪の毛が地毛だっていうことを信じてくれない。目つきは鋭くて、長い睫毛はつけまつげに見えるようで、顔が派手だと言われる。


嫌だ。嫌だ、みんなと同じがよかったのに、誰かに批判されるような顔の自分が嫌い。


「あいつって男目当てでマネージャーやってんじゃねぇの、ブスなのに」

「マジねぇよな、さっさと」


「聞き捨てならねぇな、その言葉」


イヤホンで音楽を聴いて、それでも聞こえる耳に私は反応した。あの声は男気あふれる野郎だ。でも、私はあの男と仲がいいわけじゃないし、話すことなんて必要事項だ。そもそもバレー部のマネージャーだからって仲良しなわけじゃない。


「ナマエの悪口言うんじゃねぇよ」

「はあ?西谷にはカンケーねぇだろ」


その発言が終わったとたん、机がなぎ倒される音が響いた。
女子の金切り声だって聞こえる、この時に私が起きなかったら怪しまれるのは第一。あたかも衝撃音で目が覚めたように、顔を上げて西谷を見た。目に映った西谷を見て泣きたくなった、嬉しくて、切なくて。


「うっせぇ、次。ナマエの悪口叩いたら容赦しねぇからな」

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