log | ナノ


シャワーから出てくると、いつもならナマエはすごく冷えた麦茶を用意してくれている。けど、ナマエの足音は聞こえてこない。寝ちゃったのかな、と思いながら頭を拭いて廊下を歩いた。リビングに出たけどナマエはいない。


「ナマエ、ナマエ何処に行ったの!」


どこを探してもナマエはいない。部屋の中隅々、探したけどナマエがいない。洋服は置いたままだし、靴なんて一つもなくなってない、はだしで外に出たら不審がられるからすぐに連絡がつく。ナマエにお金なんて渡したことがないから、無一文のため何もできない。帰ってくると信じているけれど、確証を得られないために僕はのたうち回る。


「ナマエ、ナマエ。何処に行ったの、戻ってきて。寂しいよ」


物音がしない部屋の中でうずくまっていると緊急要請の連絡が入った。嫌だ、そんなところに行きたくない。ナマエがいないのに、そんなところに。ふと、顔を上げるとなぜかテレビにナマエの姿が見えた。どういうことかまったく理解できなくて僕はテレビに近づいて、何が起こっているのか確認した。ナマエは知らない男の腕に抱かれて苦しそうにしている。黒い服を着たガタイのいい男、物を操るネクストだ。タイガーさんが苦戦しているのが見えた。ナマエのネグリジェ姿、白い足がバタバタ動いている。なんでナマエがそこにいるんだ。僕は急いでヒーローになるために準備を進めた。


耳にはめられた通信機器で僕はアニエスさんと連絡を取った。彼女が今一番この状況を知っている。犯人確保は難航しているらしい。「なんで、ナマエがそこにいるんですか」アニエスさんにそう聞いたら、強い目力と一緒に帰ってきた言葉は「貴方が見てない間に外に出て誘拐されたみたいね」だけ。もっと詳しく教えてほしかったけれど、アニエスさんはきっと教えてはくれない。僕と、ナマエが男女の仲になっていることを知っているからだ。


「ナマエ、早く一緒に帰ろう」


遠くにいるナマエに言った。

僕はヒーローだ。ナマエを守れるヒーローだ。犯人のいるところまでネクストを使ってナマエを奪還した。うまく変化してナマエを安全なところまで連れてきたら、ナマエは泣いていた。ずっと、僕を離さなかった。僕の力だったらすぐに彼女を離すことはできる、けど、今日の恐怖を味わってから彼女は離せない。誰かがここに来るまでに、少しだけ二人の世界でいよう。

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