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選ばれたハッピーエンドについて、少し私から説明しなければならない。イワンさんはあの夜をきっかけに私にべたべたするようになった。私ナシじゃ生きていけないと、少しだけ女々しいというか、なんというか。嫌いではない、むしろ嬉しい。この世界にとって私は異物でしかないので誰かに愛されたいし、誰かに必要とされたいから。
甘い林檎と、みずみずしい梨、小さくて食べやすいさくらんぼ。プレートに乗せて私はイワンさんに見せた。イワンさんは私が振り返ると腰元に抱き付いてきた、だがスルーしておく。


「イワンさん、林檎と梨とさくらんぼ、どれがいいですか」

「僕はナマエが食べたい、だめ?」

「わかりました、包丁ですね」


私は近くにあった果物ナイフを片手にイワンさんを抱きしめ返そうとすると泣きそうな顔をして飛び上がった。なんか、動物を相手にしているようで少し楽しい。


「ちょ、ごめん、危ないって!何なのっお見舞い来たと思えばそういう態度」


「僕はもっと、こう、恋人っぽい感じに」と言いかけているイワンさん。何か変な想像をしたのか、顔を赤らめたり、もじもじしたり、しゃがみこんだり忙しい。私はそんなイワンさんを横目に自分で食べる用の梨を向き始めた。くるくる梨を回しながら皮をむいていると「ねえ、聞いてる?」と寂しそうな視線を送っている。じれったくなって私は梨をナイフで刺して差し出した。


「男の人とイチャイチャできるなら元気なのかと」


ここに来る前にピンク色の坊主頭のファイヤーエンブレムさんがいた。しかも抱きしめられてイワンさんが白目向いていた。嫌がっているのはわかっていたが、ちょっとだけ意地悪したくなった。イワンさんは私に駆け寄って手を握った。


「あれはファイヤーさんがそういう趣向で、僕は関係ない」

「それでもなんか、腹が立ちます」

「嫉妬してくれてるの?正直に言ってよ」とイワンさんがうぬぼれた表情を浮かべて私を病人用ベッドに押し倒した。両手に握っている梨が雰囲気に合わなかった。


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