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この海賊船の船長は、寝起きの私に飛びついてきた男らしい。

麦わら帽子を触りながら私の話を聞いている様子。医務室は満員状態になるので、別室に移動して戦争について聞かれたことを隅から隅まで話した。話を聞いていた人は色々な表情を浮かべているが、私はそんなことを構っている暇はない。


話を打ち切って私はお礼を言って、この船から出ようと立ち上がったら、誰かが立ち上がる。


「なら俺も行く」


なんと、立ち上がってそう言ったのは船長。私は心の中で、こいつ相当バカだなと思う。船員たちもその声に猛抗議するが、全く相手にしない。
そっと私は船長を盗み見ると何故か怒っている、目に見えそうなくらいの怒気。


一体何に怒っているのか私はわからずただその船長を見つめることしかできない。



「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!これは私たちが介入していいものじゃないのよ!」

「そうだ、ルフィ、これは間違ってる。コイツの顔をよく見ろよっ今にも泣きそうなくらい、悲しい顔してるじゃねぇか!」

「このまま続けたって、いたちごっこに変わりないぞ!俺は加担できねぇ!」


いいや、ちょっと待て。船員はなぜ私をそう言うのだろうか。

自分の顔にそっと手を当てると、水が流れている、鼻水か?と思ったら違った、目から涙が溢れている。


戦争をしていた私が、人を殺すことにしか頭にない私がいつの間にこんなことを覚えたんだろう。


涙を流すのは、守られている女子供たちだけ。
ボスっと頭の上に誰かの手のひらが乗っかった。



「…ナマエ、お前はどうしたいんだ」

「、わ、たし?」

向けられた瞳に、私が今まで抱えたものがプチリとはち切れた。





誰のために戦っているのか?人のために戦っているのか?違うだろ、みんな、嘘を吐き続けて自分のために戦っているんだろう!みんなのためと馬鹿の一つ覚えのように何度も繰り返して、だが一向にみんながまとまる気配はない。それはみんなのために命を捨てる覚悟ができていないからだ。そして、自分のために命を捨てるという自覚もないからだ。同床異夢、という言葉があるがお前たち皆、その一つの、四字熟語ですら当てはまっていないじゃないか。

ただみんなのために戦っているという嘘で固められた希望を感じて苦しみもがいているだけだろ。


だったらやめようじゃないか。
馬鹿らしいじゃないか。


こんなこと、何故今まで続けてきたのか…。弱かった自分たちが終止符を打つのが怖かった。この一言で終わるくらいの、勇気は誰も持っていなかったんだ。


そもそも、勇気のない私たちが戦争という、怖くて、痛い、辛い戦いを起こしたのが間違いだったのだ。戦うことで自分自身が変わるとでも思ったのか?強かで勇ましい自分なんて戦争ごときで生まれ出てくるはずがないだろ。そんなのちゃんちゃんこを着て貫禄を迎える年寄りになってから分かることでもないだろう。




戦場へ向かう兵に私は泣きながら、クシャクシャな顔で伝える。
彼らは私の言葉に黙った、ホントは気づいていたけれど、口に出せなかったもの。またひとつ大きな大砲の音。今、麦わらのみんなが私たちの代わりに戦っている。食い止めておくから、私はここを食い止めろと言われた。船長は私がそう大声で宣言すると、目を見開いている。
私の右腕と呼ばれた男は私を軽蔑する視線を向けるが、負けない。


「言いたいことはそれだけか、頭」

「…、」

「前言撤回なんて許されねぇぞ」

「私は守りたい」

「自分をか」

「ああ、自分を守りたい。それと共に貴方たちの命を誰も殺さず守りたい」

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