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先日、彼と衝突した。


理由は単純、彼がまだ読みかけの本を置いていったので私は興味本位でページを開いてみたのだ。ざっくり言うなら、恋のお話。とてもきれいで、美しい女性に手玉に取られる男の子の話。けれどその美しい女性は、男の子の母親を殺していた。

そんな悲しいストーリー。なのに、その女性の気持ちと男性の気持ちが、ほんの少しだけ、私のわがままな気持ちとかぶっていた。結局、その物語はハッピーエンドを迎えるわけ。


この物語の女性のように美しくも、頭もよくないのに、誰かに愛されるってやっぱり卑怯なのかもしれない、そんなどこからくみ取ってきた不安がどっと押し寄せ彼にぶつけた。


きっと適当に返されるんだろうと高をくくっていたが、彼は私を叱った。そして「私ってひとつの物を好きになるとそれしか受け入れられないたちなの」と私が泣きながら言い、彼は「なら、俺にすべてをゆだねて任せてくれ」目を伏せて抱きしめた。



夜に彼の部屋に忍び込もうとしたら、彼は窓を閉めていた。そりゃ、入れない。携帯電話を取り出して窓を開けてほしいと頼んだが、返事はなかった。数十分後に「今帰った、窓を開けておくから勝手に入っていろ」と淡泊なメールが返ってきた。

窓に手をかけると、軽くスライドするだけですんなり開いた。手足を確認して、窓枠に水滴がついていないかよく見て、侵入すると、タイミングよく彼が戻ってきた。無造作にベッドの上で広がっている制服を見て笑っていると「片づけるのだよ」と顔を赤らめながら彼はハンガーにワイシャツと学ランをひっかけた。


「真太郎、バスケの試合はいつあるの?」


パソコンの電源を付けている真太郎に声をかけた。バスケの試合について聞くのは小学生以来だったので、彼も口を開けて私を二度見する。


「大きな試合なら明後日にある、もしやお前」

「見に行くつもりよ」

「やめろ、どうせ見終わった後に下らぬことを」

「しないわ」

「間違っても、ほかの高校は応援するな。俺たち、秀徳高校のユニフォームはわかるか?オレンジ色のユニフォームだ。待ってろ、今クローゼットから出す」

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