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俺は彼女のために何ができると考えたことがある。
幼いころだが、俺は少ない知識で出せた答えは今では鼻で笑えるものだ。だが、俺が彼女のために今できる事と言ったら何だろうと考えたら何もない。
「真太郎、私、大学辞めたら養ってね」
思い出にふけっていると、唐突に俺の思考を除いたような口ぶりで俺に言う。
大学を辞めるって、そう簡単に言っているが、彼女の両親はそんなことを認める事なんてないだろう。大学を辞めたいと発言した理由を聞きたくなったが、彼女は俺が聞いたところで話の腰を折って別の話題に移す。俺はため息交じりに彼女に返事を返した。
「何を言っている、お前が卒業しない限り養えることはないのだぞ」
「えー」
「文句を垂れるな」
だが、よく落ち着いて考えるとこれは彼女からの何らかのメッセージではないか。たとえば、家が嫌になったとか、勉強が嫌いになったとか、いじめにあっているとか。
理由なんてたくさん出てくる。果たして、俺は彼女から真相を聞き出すことができるのだろうか。黙っていても、答えなんて出てくるはずもない、俺は腰かけていた椅子から立ち上がる。
「何か飲みたいものはあるか」
「紅茶」
ではストレートはどうかと聞くと、彼女は首を横に振った。
「私は今ならアップルティーが飲みたい」
「めんどくさくて、手間のかかるものを俺に要求するな。レモンティーでいいだろ」
キッチンへ向かうために俺は自分の部屋を出る。ぶつくさ文句を言う彼女をほっといて、冷蔵庫の中にレモンがあっただろうか、疑問を抱えながら階段を下りていく。
「真太郎は聡明ね」と、俺が部屋を出ていく前に彼女が一筋の涙を流しながらつぶやいたのは気づかなかった。
涙の理由と、ミルクティーの悲しい味の理由は一生知ることはない。
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