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私が今飲んでいるのはもちろん紅茶、しかし紅茶ならなんでもいいというわけではなく、こだわりがある。

ある人はレモンティーを好み、ある人はストレート、ミルクティーもっと深く踏み込めばそれはアールグレイなのかダージリンなのか。

詮索すると楽しくなってくる。人間像がはっきりしてくるからね。だから今日も私は彼の目の前でいろんな紅茶を飲む。どんな人間なのか知られないように、そして知りたいと思わせられるように。


「ねえ、真太郎。あなたは私と違ってお友達と仲がいいのね、タカオくんからメールよ」


真太郎の携帯電話がぴかぴかと光っているから、気になって開いてみたら、タカオカズナリと書かれてあった。真太郎の一番の友達、前までは赤司征十郎だったんだけど、彼は遠くの学校へ通うようになってから、メールが来なくなってしまった。机の上で、勉強をしている真太郎に私は声をかけた。


「またくだらない話をメールというめんどくさいものでしに来たのだな、面と向かって話をすればいいものを」

「あら、メールでしかできないことだってあるわ」


私が反論しながらピーチティーを口に運ぶと、彼はすごく不満そうに答えた。


「なら胸の内に秘めておけばいい」

「ロマンチックね」


笑って返事をすると、彼は無言で携帯電話のボタンをカチカチと不自由なく押す。
私はその旧式の携帯電話じゃないから、何を伝えているのかわからない。けど、彼がとてもうれしそうに文章を作っていくものだから、私はすごく悔しい。たった数か月で仲良くなった友達に、私の居場所が奪われるんじゃないかという無性に取り止めもつかない焦りに、実にくだらなくて汚い感情がじわじわと埋めていく。


「そんな顔をするな、俺はお前を捨てるわけじゃない」

「犬のように扱わないでよ」


顔をしかめて真太郎に向かって言うと、誰かが階段を上る音が聞こえた。まずいと思って私は真太郎のベッドの中に潜って息をひそめてた。

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