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何が飲みたいの、と聞かれたらまず紅茶が思い浮かぶ。好き飲み物は紅茶だから、だって上品で、自分がさも、お嬢様で高貴な人間だと酔いしれることができるから。

でも、嫌いでもある。だって、私が嘘をひっかけたマントを身にまとっていることを思い知らされる。大学の授業が終わって、帰ろうかと思った時だった。年下の幼馴染が通っている高校の生徒が前方から走ってきた。きっとバスケットボール部だと思う、足に筋肉の付き方からして、バレーとか、サッカーじゃないのはわかった。背の高い、緑色の髪の毛が見える。

バタバタ、足と息を弾ませて私の横を通り過ぎていく、真太郎。何もなかったし、帰ろう。



「なぜ、あのとき声をかけなかった」

「声をかけて止まるとは思えないからよ」


いつものように、窓からお邪魔して真太郎のパソコンにデータと入れてからレポートに取り掛かる。昨日の夜は遅くまでやっていたから頭がうまく働かない、ぐらりぐらりと揺れている頭の中でめちゃくちゃな文章を作り上げた。真太郎は部屋に入ると、私を確認してから疑問をぶちまけた。
正々堂々、とは言わないが私は正論を唱えた。


「俺が愛しているといえばそれを弱みにいつも揺さぶるくせに、お前から俺を愛していると一度も言ったことはないな。それほど自分が大事か?それほどお前の自尊心というものは脆くて、儚いものなのか。ざまあないな」

「一方的に愛されるのが好きなの」

「嘘ばかりつくお前の言葉は信用ならんな」


バッサリと切り捨てられて、私の頭の中は真っ白になった。


「嘘つきのお前にはもうさんざんだ、俺は疲れているんだ。今日は帰ってくれ」


指先はキーボードじゃなくて、マウスの上。カチカチと捜査して、データを抜き取って、私の足は動く。なんで、ここで帰るの?私。いやだ、まだ帰りたくない。本音を言って、本当に望んでいる動きをしたいのに、体は言うことを聞いてくれない。窓枠に私は手をかける。足をかけて、自分の部屋へ戻ろうとしたとき。


「すまない、今のは詭弁だった。こちらへ戻ってきてくれ、ナマエ」

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