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長い長い歴史を持った民族の私は、昔からとある信念に雁字搦めになっているような気がする。
そう思ったのはつい最近だ、戦争を起こして私はいつも人の命と、民族の存続を天秤にかけてしまい、手先が狂う。人の命を簡単に奪えるこの両手を私は己の首にそっと伝わすと見えなかった印が見えて、私は民族の継承者だと残酷な程わかる。

戦いに、この争いはいつ終わるのだ?いつ、誰も傷つかない時代が訪れるのか…。



ぼんやりと霞む視界がはっきりしたのは、誰かが私を抱きしめた時だった。力強く抱きしめて「良かったな!」と何度も大声で言っている。

痛みが全身に走ったから目が覚めたのではなくて、彼が私に「良かったな!」と声をかけたから。彼らにとって私を生かしておいていい存在なのか、さっと不安に駆られて無理矢理彼から距離を保とうとするが、なかなか剥がれない。

ゴムのように伸び縮みする彼は悪魔の実の能力者だ。


「ルフィ!あんた怪我人に何してんのよ!さっさと離れなさいっ」

「麗しのレディも嫌がってるだろうが、さっさと離れやがれ!」

「…、っ」

「ルフィ!せっかく縫った傷口がまた開いちまったみたいだっ」

「うをぉお!悪ィ!」


鹿だと思っていた彼はよく見ると可愛いトナカイだった。

トナカイは急いで針と薬箱を取り出して私の服に手をかける。咄嗟に私はベッドから飛び降りて戦闘態勢に入る。理由は、もしかしたら彼らは敵対する族の応援かもしれない、と思ったからだ。

最近では見慣れない輩達もちょくちょく登場してくるので、追い込まれるのは当然。

闘争本能剥き出しじゃない状態でも戦える、痛みは広がるばかりだけど寝たから大丈夫。あの窓を突き破っていけば逃げられる、そう思ったとき、背後から気配がしたので飛び上がり、天井を蹴り飛ばしその気配の正体に向かって蹴りを入れようとした。


私の蹴りは刀で抑えられた、緑色の髪の毛、厳つい感じの顔つきの男がニヤリと笑った。だが、「ゾロ!刀をしまいなさいよ!逆に怯えちゃってるじゃない!」とオレンジ色の髪の毛の女の人が大声で私に言う。


あの女性が言った、怯えるとはなんなのだろうか。

チっと舌打ちが聞こえて「女、そこから降りろ」と命令口調で言われた。大人しく従ったほうがいいのか、迷っていると誰かが私の首根っこを捕まえてベッドにおろした。

誰か…いいや、手だけが見えた。「ロビン、流石!」という声が聞こえた。ロビンと呼ばれた女の人は私を厳しい目で見ている。彼女も、悪魔の実の能力者。


「みんな、とりあえず出てくれ!もう一度縫合する!」

「今回ばかりはアンタのせいだからね!ルフィ!」

「だぁーって全然起きねぇんだもん、アイツ。やっと起きたからしゃべれると思ったのによぉ」

「ぜってぇ警戒心持ったぞ、俺らに」

「スーパーなお嬢ちゃんで何よりじゃねぇか」


ぞろぞろと退散していく彼らの背中を見ていると、トナカイに横になってくれと指示されたので私は黙ってベッドの上に横になる。

人生二度目のベッドに私はちょっとだけ緊張していると「あんまり力むとやりづらい、もっとリラックスしてくれ」と言われる。
疑問と、心配がぐちゃぐちゃに混ざり合っている状態でリラックスなんてできるはずもない。


戦争は、どうなったのか。
今はどこをどう攻めているのか。
あの花畑は、どれほど荒れてしまったのか。


開いてしまった傷口を凝視しながら考えていると、気づけば縫われている。使い終わった道具を消毒剤を張った桶の中に入れて私の体温を測ろうと体温計を差し出した。小さく、ありがとうとお礼を言って体温計を受け取った。


「あ、ありがとうって言われても、嬉しくなんかねーぞ、コノヤロー!」

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