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彼女の事を考えた時、俺は胸が躍る。彼女の紹介をしていなかったな、彼女は俺より三歳年上で黒くてつややかな髪の毛、細目で口元にほくろがあって、身長は高め。

特徴と言ったら一つだけ、彼女は大ウソつき。

つい先日、俺が音楽の話をしているとドヴォルザークが好きだと言っていたのに、今日になってビゼーが好きになっていたり。
プロフィールにはオムライスが好きだと言っていたのに、今ではピーマンの肉詰めが好きらしい。気が変わるわけじゃない、彼女は嘘を嘘で塗り固めて重たくなってしまったかわいそうなのだ。


「うるさいわよ、真太郎。少し音量を下げてくれないかしら」

「お前こそうるさいのだよ、いい年しているお前こそ控えめになるべきではないか」

「あら、年下が年上を敬うべきよ」

「敬うに値しないお前に、俺は遠慮などしないのだよ」


紅茶を飲みながら、彼女は音楽を聴く。今日はビゼーのカルメンを俺の部屋で響かせて、俺は俺でバッハを聴いている。部活を終えて帰ってきたと思えば、彼女は俺の部屋の窓から侵入してきたみたいだった。いい加減に腹が立ってきて、彼女の使っている音楽プレイヤーの電源を落とした。
俺の仕業だと知るなり、彼女は顔を赤らめて怒りを爆発させた。


「なによっ、私のことが好きって言ったくせに」

「いつ俺がそんな戯言をお前に向けて口走った?被害妄想も大概にしろ」

「なら、もうここに来ないわよ!」


彼女は近くにあったクッションを投げつけるが、俺にはそれがスローモーションに見える。もうここに来ないと宣言した彼女を捕まえるために毛布をかぶせて前を見えなくさせると、激しい動きが止まった。俺は彼女にかぶさった毛布をはぎ取って、そのまま床へと押し倒した。鈍い音が床に響いて、より、この空間が臨場感を増す。


「いかないでくれ、俺から離れるなんて一生許さない」

「うるさいっ私は女の子が好きなのよっ」

「レズビアン?バイセクシャル?俺の目の前で適当なウソをつくな、馬鹿馬鹿しい」
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