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「美味しそうだね、寿さん」
僕のお弁当を覗き込んでみているナマエちゃんは天使だ。田舎臭いとか、可愛くないなんて言わなかった。マイガールっていう言葉で抑えられないくらい、綺麗に笑った。咄嗟にナマエちゃんに返事をすることはできなかったけど、初めて僕に声をかけてくれたあの言葉は覚えている。憧れだったナマエちゃんはグラビアアイドルで、まあそこそこ売れていた、そのナマエちゃんの熱狂的ファンだった僕にとって、今彼女がそばにいるのは信じられないことだった。高嶺の花だと思っていたけど、いつの間にか、僕にでも手にできるようになっていた。
きっと彼女は覚えていない。
悲しい事実だけど僕は気にしない。これからずっとナマエちゃんのそばにいられるんだから。ナマエちゃんが雑誌に出ていたから僕は知ることができた、けどもうそんな仕事はいらないでしょ?僕のことを人間ATMだと思って使っていいよと言っても彼女は遠慮がちに笑ってごまかすだけだった。
そんな笑顔すらできる余裕もなくなったあるとき、彼女は泣きながら僕にすがってきた。
何がおかしかったんだろう、そう思っていた。どこをどう間違えて彼女を怖がらせてしまったんだろうか。
「ナマエちゃん、どうしたの?何が怖いの?」
「あ、明日が。明日が来るのが怖いの、もしかしたら、私」
「大丈夫、僕たち結婚してるじゃん。もぉー忘れちゃだめだよ!」
僕がそう返すと、絶望的な色に染まったその瞳。それも綺麗だと思うのは、結構末期だと思う。
結婚届けだって彼女が寝ているあいだにサラサラっと書いて役所の人に提出しちゃえば何の問題もないし、彼女を外に出さなきゃスキャンダルにだってならない。てか、家の中にいてくれることは僕にもメリットがある、万々歳さ。
「ナマエちゃん。僕はとっても幸せだよ、あこがれのナマエちゃんがここに居るんだもの。でもね、もし、ナマエちゃんが逃げようとしたら…殺しちゃうかも」
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