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「御子柴君、もうちょっと前に出ようか?」

「え、あーえ」

「そ、それとも、避けようか?」

私ははっきり言って男の人が苦手だ。席替えで、窓側になったのはいいけれど、後ろの席は噂のプレイボーイ、御子柴君だ。居心地悪そうにしていたので、私は、コミュニケーション不足ながらも話しかけてみた。しかし、御子柴君はきっと私が嫌いなんだろう、何も答えてくれない。だめだ、死にたい。もうおうち帰りたい。顔を俯かせていると目の前に一枚の紙が差し出された。
そこには「別に、平気。変に気を遣わなくていい。ありがと」と、書かれてあった。私も、シャープペンを持って書き綴った。「口下手だから、あんまりうまく伝えられないかもしれないけど、よろしくね」と伝えると、御子柴君はなぜか笑顔を浮かべた。
それから、口で伝えるんじゃなくて文章で伝えることが多くなった。メールのやり取りだって増えた。高校入ってから初めての男友達に喜んでいるのは確実。

「御子柴君がね、それで」

「最近よくナマエの話題に御子柴君って出てくるけど、それってみこりんのこと?」

「みこりん?」

「あ、そっか、クラスが一緒だし、御子柴は一人しかいないから…へぇ、進展してるんだ」

「進展?」

にこにこ笑いながら、美術部で一番仲がいい千代ちゃんが一人納得している。進展?私は適当に返事すると、千代ちゃんの思い人の野崎君が「今日もいいか」と慣れた口ぶりでお誘いをしていた。これこそ女子高校生って感じだ。千代ちゃんは「じゃあ、先に帰るね」と言って去っていく。私もこんなとこでウダウダしていると、帰れなくなっちゃう。バスの時間を調べて私は立ち上がると、ドアの先に御子柴君の頭が見えた。しゃがんでいるようだ。鞄を持ち上げて、足音たてないようにそっと御子柴君に近づいて声をかけた。

「御子柴君、どうしたの?」

「、ミョウジ、あのさ、俺とい、い、一緒に帰らねぇか!」

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