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「おはよう、ナマエ。そしておはよう」
「…おはよう、ございます」
新入りのヒーローは日本人。艷やかな黒い髪の毛に伏せ勝ちの眼差しは誰よりも美しいと思う。けれど、ナマエはシャイなのか、それとも警戒心が強いのかなかなか私たちの中に入ってこない。バーナービーくんのようにツンケンしたわけじゃなくて、食事に誘ったとしても「みなさんで楽しんでください、私、レポートが出来てなくて」とかで三回に一回は断っている気がする。というか、そうなんだ。私たちから一線、境界線を引いているようで、あ、勿論ヒーローになったときは一番に協力を惜しまないのは彼女なんだ。
彼女はいったい、何を抱えているんだろうか。気になっていつも声をかけてみるが、うまく翻されて答えは帰ってこないのだ。
過ぎ去る時に、ふとパタパタと仰いでいる背中が見えた。たくさんの切り傷が見え、私は咄嗟に彼女を捕まえてしまった。
「っ、なんですか、キースさん」
「その切り傷はどうしたんだい」
私が彼女に聞いたとき、周りには誰もいなかった、朝方だったから当たり前だ。このトレーニングルームには私と、彼女ふたりっきり。言い方が悪いかもしれないが彼女を犯したって誰にも見つからない。
「どうもしません、ただ、トレーニングで」
「どうして、君は嘘ばかりついて逃げているんだ」
「逃げてなんかいませんよ、私は」
掴んだ腕を離したくはなかった、手放した途端に彼女が逃げてしまいそうで怖いのだ。私は少しだけ力を込めて彼女を引き寄せた。戸惑いながらも私を睨んでくる彼女は、怯えた犬のようだ。すまない、と思いながら私は彼女の頬にキスをした。なぜ、キスをしたのか途端に騒ぎ始めた彼女に私は嘘を付かないでいった。
「私はキミから目を離せないんだ、虜になってしまった」
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