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震える指先で私は、窓に絵を描いた。キュッキュと音が鳴って私の童心をくすぐった。ニャンペローナを描いたら、與儀、喜ぶかな。あんまり喜んだ顔見たことないけど、怒った顔しか見たことないけど、今度なら、できるかな。笑顔を浮かべて私は窓に沢山のニャンペローナらしきものを描くけどなかなかできない。眉間にしわを寄せ、冷たい指先で必死になっている私はどう見えているのか、そんな繊細なことは知らない。
沢山のお人形に、フワフワしているクッション。ピンク色をモチーフにした壁紙は、まるで私を赤子のようだと言っている様だ。キラキラした宝石に輝くことを忘れない外の光の源、太陽。

「何やってるの」

自分の世界にうっとりしていると、背後から声をかけられた。夢中になるのは誰も侵すことができない自由。その声は與儀だってわかってる。

「與儀!あのね」

私が意気揚々と彼に語りかけようとするけれど、彼は不機嫌そうな表情に変わる。どうして、私をそんな目で見るの。やっぱり私はいらない子なの?悲しみが自分の心の中で渦巻くが、與儀は私の意見には全く耳を持たずに、背中を押す。問答無用でベットの中に押し込まれる。

「寒いからそんなことやめようね、ほら、もう指先が冷たい」

「あのね」

少しだけ体を起き上がらせて與儀に話しかけるけれど、與儀は私に背中を向けて、女の子らしいクローゼットから上着を取り出している。パタンと閉められたクローゼットの音に私は心の中にあった悲しみや不安が纏められて押し込まれたと感じる。
相変わらずの癖毛は直っていなくて手を伸ばそうとしたが、その腕まで捕まえられて上着に腕を通すように命じられて、私は押し黙った。

「ほら、風邪ひいちゃうから。薬飲んで寝ようね」

あとどれくらい私はこの部屋にいたらいいのだろうか。薬ってそれは與儀が言っていた「燈先生」がくれたものなのかわからない。そもそも、私は薬が必要な身体であったか?出された薬はカプセル状のもの、一体なんなのか正体も聞かずに私は口の中に入れた。

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