log | ナノ
女の子ウケする顔だってわかっているのに、どこかで荻みたいに男友達でも仲良くできるような顔が良かったと妬んでいるところがある。俺の大好きな彼女でさえも、結局俺とは付き合えない、さよなら。遊ぶなら自分とで、本気は誰か、なんていうことは何度も経験したのに、この年になるとどうも感傷的になる。


「緒方って女の扱い慣れてるね」

「えっへん、スゴイだろ?」


女性に対して義烈はがなくなっていたのは気づかなかった。コーヒーを飲みながらジト目で俺を見ている彼女に、挨拶のキスをしようと顔を近づける。


「やめて」


柔和な笑なんて彼女にはできない。

普段から真剣な顔つきでプライベートも過ごしているんだから、当たり前か。

しかめっ面で、近づいてキスをしようとした俺に一喝。そっと体を離してベンチに腰掛けて「つれないなぁ〜」と笑う。泥試合をする程俺らは深い中じゃないから、これ以上関わっても無駄足だと感じた。


「女の子ばっかりちょっかい出すなんて、あの人ソックリだね」


小さく呟いた言葉に俺は「だれ?」と聞いた。

けれど彼女は、俺には無関係の人だから、答える義務なんてないの。


なんて適当な答えでうやむやにした。嬋娟を崩したことがない俺に勝る男なんているのか。どうやったら聞き出せるか…無駄な闘争心に火が付いた。


「なぁ〜教えてくれよ、ナマエ」

「だから関係ないでしょ、私の蛇足な話だったの」


コーヒー缶を律儀にプルトップと分別してゴミ箱の中へ入れて休憩所から立ち去った。俺も遅れを取らないために、飲みかけだったソレを一気に飲み干して乱雑にゴミ箱へ入れる。彼女の足跡を追う。迂曲する廊下を走っていると、彼女がいないのを知る。


「聡明」


屋上で敵の名前を愛おしそうに語っていることは誰も知らない。

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