log | ナノ
いつもと変わらない日常が僕にとっては、今一番幸せかもしれない。どうでもいい人の心なんて読まくてもいいし、だらけきってても、夏輝にはしょっちゅう運動しろって言われるけど聞き流せば問題ない。此処に、僕の愛してやまないにーにがいないのは一番の問題だよ。警察犬だった頃と比較すると音速超えて天秤は傾く。
朝六時、目覚ましが鳴り響いて僕は片目をこすって起き上がろうとはせず、横に寝返りを打つ。ぬくぬくと暖かい布団に包まれている朝は習慣。
ガラっとヤギさんが障子を開けた。冷たい風が通るのがわかると僕はもっと布団の奥にうずくまる。なんでそんなに朝から元気なの?ヤギのくせして。
「起きるであろ〜」
「え〜もう二時間」
ぎぎっと力を込めて僕から布団を剥がそうとするヤギさん、だから僕はまだ起きたくないんだ。ドンの心を覗いてみると、新しいネタが浮かんだたしくて僕にも協力して欲しいようだった。
僕の手足(夏輝と弥太郎)を使っていいから寝かせて。ナマエは勝手に使用したら角へし折って道頓堀に捨ててきてやるから。
「長すぎでおろ〜ナマエ、さっさと移動させるでおろー」
「はい、首領!掃除機で吸い取っちゃえばいいんですね」
「顔に似合わず鬼畜であろー」
可愛い顔しちゃって、周りに愛想振りまいて。まあ、それが彼女の技であって僕らの武器にもなる。ナマエは片手に掃除機を持って僕に近づくなり、布団ごと持ち上げてソファの上に置いた。冷たいソファに置かれて僕が不満げな顔をすると「後で暖かい牛乳持ってきますからね」と心の中で伝えた。
「仕方がないなぁ」と僕が言えば、ナマエは苦笑を浮かべて「これも仕事の一環ですから」と返して掃除機をかけた。今日も変な音がする掃除機。
…午後にでもノアに頼んで改良してもらおう。
軽めの食事を摂ったあとに出てくるのはナマエ特製の暖かいミルク。純真な心で待っていたのに、出てきたのは僕のだいっきらいな苦い薬。良薬口に苦しっていうけど、僕に効果を現してから言って欲しいよ。
わがままな僕がナマエに苦情をぶつけると、苦笑を浮かべて宥める。
どうして、僕には悲しそうな、苦しそうな表情で返すんだろう。
警察犬だった頃の笑顔をもう一度僕に見せてよ。僕がいることに不満そうじゃないか。
「ナマエ、僕が頼んだのは暖かいミルクなのにどうして水と薬なの?」
「文句を言うならさっさと自分で持ってきなさい。何より遥、あなたはまず薬を飲みなさい。あ、でも薬飲んだあとに牛乳のんじゃダメですからね」
「じゃあナマエ、僕に飲ませてよ」
ブフォっと後ろの方で夏輝がお茶を吹いた。弥太郎はなぜか床をたたいている。あ、弥太郎、自分にもして欲しいですナマエさんって思ってる。お前はシャンプーでも飲んでろ。モコモコした聡明さんは弥太郎に乗り移ったようだ、二人分の声が聞こえる。うるさい。
「なな、何言ってるんですか遥さん!」
「大胆だな、遥。なんなら俺がやり方教えてあげるぞ」
「やた…いいえ、聡明さんふざけると三丁目までぶっ飛ばしますよ」
「リアル過ぎて想像しちゃったっす、遥さん、薬飲んでください」
「えーだって苦いでしょ?」
「デリケートすぎて何も言えない」
ナマエ、笑ってよ。わがままな僕だけが幸せになってるようだよ、これじゃあ。
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