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今日は命懸けの仕事が待っている、シークレットドーベルマンであるからに仕方がないのかもしれない。でも、私はまだ死にたくないのか肩が震えていた。でもここで後輩のステラに恥ずかしい姿は見せたくなかった。
現相棒の荻野さんは何度も「やめてもいい」と説得させられたけれど、首を横に振り続けた。
ふざけた看板をみて、口元を緩めてドアノブを掴んだ。ドアを開けると大先輩である因幡先輩しかいなかった。部下の二人はもう帰っちゃったみたい。私の唐突すぎる訪問に持っていたカップを落とした因幡先輩。



「因幡先輩」



右手に持っていたお高いケーキを見せると、尻尾を振ってばっと奪った。食いつき早いな、先輩。ドアを閉めて因幡先輩がくるくる回っている時に落としてしまったコップを片付けていた。



「先輩じゃなくていいつってんだろ、てか珍しいなお前がこんなところに来るなんて」



給湯室に不意に投げられた言葉に、詰まってしまった。雑巾はどこかといろんな扉を開いては締めてを繰り返してやっと出せた答えは見え見えのウソだった。



「おいしいお菓子持ってきただけです」

「…仕事、なのか」

「はい」



雑巾が見つかったので拭こうとしたが、因幡先輩が私の右腕を掴んだ。顔を上げると、心配そうな表情で私の髪の毛をそっと触った。情報を読み取ろうとしているのは分かっているけど、抵抗はしない。



「辛くねえのか」



答えなんてわかってるくせに先輩、いちいち確認するように聞いてくるんだから意地悪だ。近くにあったソファに押し倒されるように座ると、因幡先輩は髪の毛と右手首から手を離さないで覆いかぶさると耳元に顔を寄せて囁いた。



「…なあ仕事辛いならやめてこっちこねえか、俺はいつだってお前を迎えられるんだ」

「あれ、ボケない因幡先輩なんて変な感じです」

「茶化すなよ、お前ほど…ツヤのある髪の毛の持ち主はいねえんだよ。な、なぁ…最近疲れてんのか、傷んできてるな」

「そこは、せめて私のことが好きだって言って欲しかっです」



照れくさそうに笑ってみると、因幡先輩は私のまぶたにキスを落とした。私の手から雑巾を奪い取って、右手首を抑えていた方の手は私の頬を撫でる。くすぐったくて体をよじると、因幡先輩は髪の毛を何度も触った。



「まだ、ここにいろ。遥みたいにどこにもいかないでくれ」

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