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変わらない光なんてない、ずっと仲良しだった友達はいつの間にか隣から消えていた。喧嘩したわけじゃない、ただ、突然。「学校、辞めるんだ」なんて下手くそな笑顔で言うんだから、私は「よく、頑張ったね」なんてさも彼女が一番の功労者のように讃える言葉を贈った。

違うの、私は利口な子でも、我慢強くもないの。

この時期の香りを肌で感じると私は泣きたい衝動に駆られる。抑えられなくなったらすぐに、誰も居なさそうなところへ駆け込んでは密かに泣いていた。火傷よりも熱い涙が頬に伝う。


「どうしたんだ、二年生のえっと…ミョウジさん?」


大きい体をわざわざ折って、私と目線を合わせてくれる男の人。多分この人のバッチを見る限り、三年生なんだろうなぁ。茶髪の髪の毛は一つにまとめられて、優しそうな目つきと落ち着いた口の利き方。泣いていた私はピタリと涙が止まった。


「え、あ、ごめ、突然話しかけて、び、びっくり、しし、したよね」


首を横に振って、驚かなかったと伝えた。初めて私は知らない人に見つけられた。


「そ、っか…どこか、痛いの?保健室、行こうか?」


また、私は首を横に振った。だって私はどこも痛くないの、痛かったのはあの子だから。痛いのは私じゃなくて、その周りにいるたくさんの人達なの。唇を噛み締めて、頬を伝う涙をこらえる。じわりじわりと広がっていく涙のシミに、男の人は一旦、驚いたような顔をして、次に思いつめたように目を伏せて私の頭を撫でた。


「お前はいいんだな、誰かの為に泣いてるんだ」

「貴方は、いい子じゃないんですか」

「俺は、泣いている子をただ傍観してやっと声をかけた悪い奴さ」


ずっと私のことを見てたのか、というのは口には出さなかった。


「一人で泣くより誰かが隣にいたほうがいいだろ?って言っても時間とかは限られちまうけどな、悪いな」


どうして、彼が謝るのかわからなかった。

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