log | ナノ
「どんなタイプが好きなんだ?」と、東峰くんは私に何度も聞いてくる。それも、なんだか泣きそうな顔をしていた。

曖昧に答えるのは相手に無礼である。

どんなと言われ、うまく伝えられない、口をパクパクと言葉の空振りばかりでまともな言葉のキャッチボールができていない。お話することが苦手なのを分かって彼は、まどろっこしいことをしてるんだろうか、それともからかっているんだろうか。


「あ、わ、わる、悪い!そんな顔させるために、え、あーっすまん!」


アタフタと、冷や汗をかきながら彼は私の肩を揺さぶって落ち着かせようとしてくれる。きっと彼は心優しいと思う、だからからかうことなんてない。椅子に座ったままで、冷や汗と乱れる呼吸の私は、喉を鳴らすように言葉を吐いてみるけど、やっぱり出てこない。


「その、だなぁ。隣の席だし、何かきっかけをと思って話しかけてみたんだが、混乱させて悪かったな。でも」

「っ」

「俺と、少しでもいいんだ。話してみないか」


照れくさそうに笑った姿が、心配ないと表現しているようだった。東峰くんはそう言って隣の席の、机の上に無造作に置かれたカバンを軽そうにヒョイっと持ち上げて肩にかける。一連の動作が、ちょっとだけ新鮮に感じた。オレンジ色の夕日が彼の体を照らして、強面に見えるハズなのに、気高い選手に見える。


「どうした?」


こちらを振り返って、私に視線を寄越す。茶色がかかったその瞳に、吸い込まれたように離せない。だらし無い顔をしているだろう、けれど私は彼の瞳から己の目をそらすことはできなかった。半開きになった口からは、こんな言葉が飛び出す。


「東峰、く、ん。さっきの答え出したいんだけどいいかな」


東峰くんは顔を赤らめて首を縦に振った。夕日をバックに肩にかけたカバンはもう一度机の上にドスンと置いて、隣の席に着席。タイミングを見計らって私は言葉を紡ぐ。


「好きなタイプはわからないけど、東峰くんが好き」

|